「ただいま」

「おかえり」

　即答が返って来た。見ると玄関に父が突っ立っている。

「だいじょうぶか？」

　……何が？

「変なことされなかったか？」

　強いて言えばひょっとこ面の変質者に変なことされたけど。

「せっかく親切おじさんが荷物を持ってあげようとしてたのにな」

　全然懲りてないな。とりあえずチョップしておく。

「ひ、ひどい」

「けんかするほど仲が良いって言うでしょ」

　まあ、これはけんかというより制裁だけど。

「そ、そうだな」

　けれど途端に破顔する父。うん、単純。

　冷蔵庫に食材を入れ、自分の部屋へ。椅子に腰かけ、ひと息つく。

　――けんかするほど仲が良いって言うし。

　彼の言葉を反芻する。ちょっとだけ頬が緩む。

　……私も単純なのかも。

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