その144、最終日(1)

 スマホの画面を見返す。

 映っているのは、青色の羽をしたトンボの標本。チョウトンボ――GWにピータンたちと行った昆虫館で撮ったものだ。

 これを牧野に送ろうか送るまいか。それが目下の問題だった。

 物珍しさで言えば、ナギサハネカクシを送るべきなんじゃないか? でも、チョウトンボの方が見た目きれいだし……そもそも写真をわざわざ送ったりして、うざがられたりしないか――

 LINEを開く。買い物の日程調整以来、トークは絶えてひさしい。そのせいでメッセージを送ること自体も何だか気が引ける。

 極めつけは、姉の言葉だ。

「虫が好きな女なんているわけないだろ」

 うん、やっぱりやめておこう――

 ピコーン。

 着信が鳴った。

 牧野からだった。

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