【番外編】エイプリールフール

 どたどたと足音が響いたかと思うと、父が部屋に飛び込んできた。

「宝くじが当たったぞ!」

 ……嘘をつくにしても、ひねりがなさすぎるだろう。

「すごい! いくら当たったの?」

 とりあえず話を合わせてみると、父はびしっと手を前に突き出した。

「五兆円!」

 もっとこう、なんとかならなかったのか。父が意気揚々と続ける。

「お小遣い、来月から一億円にして進ぜよう」

「え、本当に?」

「はっはっは、騙されたな金の亡者め。今日は何日だ?」

「四月二日でしょ」

「え」

「一億円、楽しみにしてるね」

 しばしぽかんとした後、父は慌てて出て行った。日付を確認しに行ったのだろう。

 私はくすりと笑った。

「エイプリールフールだし、これくらいいいよね?」

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