その74、空と君との間には(3)

 廊下一面に悲喜こもごもが繰り広げられていた。

 項垂れる男の子、手を取り合う笑顔の女の子たち。そして訳知り顔にうんうんと頷いている子。いや、どのポジションだよ。

 と、カッコーの背中が見えた。覚束ない足取り――どうやらダメだったようだ。

「二百円……二百円返せ」

 ……だいじょうぶだろうか。心配になって、ぽんとその肩を叩く。

「だいじょうぶだよ、きっと」

 私を見た彼は一瞬顔を歪め――そっぽを向いた。

「うるさい」

「……は?」

 予想外の言葉に固まる。

「うるさいっての」

「ちょっと!」

 横からミカちゃんが声をあげる。それを手で制し、私はぶっきらぼうに言い返した。

「ごめん」

 返事を待たず、歩き出す。ちょっとだけムカついていた。

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