その103、お好み焼きを返そう(4)(※『さっちゃん』で間違いありません)
私はため息をついた。向かいに座る妻は無言で鉄板を見つめている。
半年前、二人に初めての娘ができた。仕事でも新しいプロジェクトを任され、前途は洋々だった――はずなのに。
育児と仕事に追われ二人、時間が、気持ちがすれ違っていって。
そのうち、娘が笑わなくなった。笑いかけても反応せず、仏頂面。
このままではいけない――
だから、この店に来た。二人が出会った思い出の場所。ここに来れば、何かが変わると思って。
けれど、突き付けられたのは無情な現実だった。時計の針はもう戻せないのだ、と。
伝票を手に取る。もう、ここにいる意味はない。
と、そこで私は思わず固まった。彼女も目を見開く。
「うそ……」
目の前で、奇跡が起きていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます