その142、別荘に行こう(13)

「当てが外れましたね」

 椅子にもたれ、源氏は苦笑した。

「みんな考えることは同じ、か」

 ブランデーを喉に流し込む源氏。飲めない俺は何枚目かのクラッカーをかじった。

 源氏の部屋。二日目の陽はとうに落ちているが、壁を隔てていまだ騒がしい声が響いてくる。

「まあ、でも」

 源氏が振り返る。

 はしゃぎすぎたのだろう、我らが娘たちはソファで寄り添って寝息を立てていた。

「喜んでくれたし、よかったんじゃないですか」

「違う」

 俺は娘の寝顔を見つめる。

「こんなかわいい寝顔が見れたから、よかったんだ」

 ぷっと噴き出し、源氏はグラスを掲げた。俺もミネラルウォーターを手に取る。

「我らが娘に」

「乾杯」

 遠くから、ひと際大きな笑い声が響いた。

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