4.スタンピード

サヤが必死で走って駆けつけ、たどり着いたエルフの里は……


「な……なに……!?これ……!!?」


里全体に火の手が上がっていて、家屋の全ては全焼していた。しかも……


「うぐおぉえぇ〜!!?」


サヤが苦手とする力が里中全体に広がっていて、サヤは我慢出来ずに吐いてしまう。里に住むエルフ達は血を流して倒れていた。サヤはそのエルフ達をチラッと見てすぐに目を背ける。そのエルフ達は何か獣の爪や牙でやられたような傷跡があったのをチラッと確認した。


「もしかして……スタンピード……?」


スタンピード。それは、ごく稀に起きる魔物が集団で群れをなして来る超危険自然災害扱いされてる事象である。


「けど……どうして……?」


サヤはこのエルフの里がスタンピードに巻き込まれた理由が分からなかった。

この世界には、無数の「迷宮」と呼ばれる物が出現する。魔物が発生するのはこの「迷宮」が原因である事が最近の調査により分かっている。「迷宮」は迷宮の最奥にいるダンジョンマスターと呼ばれる強力な魔物を倒せば消える。故に、冒険者達は「迷宮」を攻略し「迷宮」を無くすのを主な活動にしている。更に、その「迷宮」をいくつも攻略すれば、「勇者」の称号が与えられ、富と名声と地位を手に入れる事が出来る。その1人がギリアスなのだ。


そして、そのギリアスがこのエルフの里も領地になってる、亜人と人間が仲良く暮らしてる国「テリュカ」の「迷宮」攻略はほとんど終えたと、冒険者ギルド大々的に報告していて、サヤもそれを聞いていたので、この国で魔物被害はもう少なくなると思っていた。


しかし、それはサヤの思い違いであった。ギリアスはあくまでほとんど攻略しただけなのだ。まだ、「テリュカ」には無数のランクが低い「迷宮」が残っていた。ギリアスはランクの低い「迷宮」はあえて攻略しなかったのだ。

何故なら、ランクの低い「迷宮」が残っていても、発生する魔物はランクの低い魔物ばかりで、それなら自分よりランクの低い冒険者でも対処出来る。ならば、自分はランクの高い「迷宮」だけ攻略し、ランクの低い「迷宮」はランクの低い者に任せればいいというのがギリアスの考え方だった。わざわざ自分が労力をはたいて攻略する意味はないと思っている。例え、スタンピードが起きたとしても、ランクの低い魔物の集団が群れでやってくるだけなので、結界魔法の力があれば何とかなるものだとギリアスは思っていた。


しかし、ギリアスはスタンピードを対処した経験が一度もないせいで、スタンピードの本当の脅威をまるで分かっていなかった。

スタンピードは、少なくても100匹以上。多いと一国の総住民以上の魔物が集団で押し寄せてくるのである。そんな数で攻めてこられたら、例え「勇者」の称号を与えられた冒険者でも太刀打ち出来ないだろう。おまけに、スタンピードの魔物には、その魔物の上位種や、ユニークモンスターと呼ばれる異常個体の魔物、更には、ダンジョンマスターに匹敵する魔物まで混じってやって来る事がある。集団の雑魚魔物だけでも厄介極まりないのに、それらも対処するとなると、もうお手上げ状態である。現にこのエルフの里がいい例である。

しかも、このエルフの里が不幸だったのは、数日前にギリアスが訪れた際にギリアスが


「ここらの「迷宮」はほとんど攻略した!だから安心して暮らすといいぞ!」


と、ギリアスは酒を煽り、複数の女エルフの肩を抱き寄せそう高笑いして言ったので、エルフの里の住人は「烈火の勇者」の言葉を信じきってしまったのだ。

本来、エルフは警戒心が強い種族ではあるのだが、ここ「テリュカ」では人間やら他の亜人種族との交流が盛んだっただけに、そこら辺がだいぶ薄くなってしまっていた。故に、勇者の言葉を信じたエルフが結界魔法を張るのを怠ってしまい、今のこの惨状が出来上がってしまったのだ。


「……まだ……誰か無事な人がいるかもしれない……!助け……なきゃ……!?」


サヤは吐き気がするのを必死で我慢しながら、まだ生存者がいるかもしれないと小さな希望を胸に抱いて、ヨロヨロと歩きながら生存者を確認する為に崩壊したエルフの里を見て回る事にした。

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