7.サヤの強さ実感して決断するクロード

  突然現れたアリシアがサヤに剣を向けたのにも驚いたが、そのアリシアの剣を片手で受け止め、しかもアリシアの方を振り向かずに受け止めた事実にクロードとマグナスは驚愕したが、マグナスはすぐに止めに入る。


「アリシア!?お前!いきなり剣を向けるなんてどういうつもりだ!!?」


「そうカッカッするな。マグナス。ちょっとした挨拶みたいなものさ。マグナスが可愛がっていた弟子がどれ程の実力か見てみたかったのさ。いやあぁ〜マグナスから優秀だとは聞いていたがこれ程とは思わなかったよ!」


全く悪びれもせずに笑いながらそう答えるアリシアに、マグナスは頭痛を覚えて頭を抱えたくなった。クロードも同様である。

  アリシアは「烈風の勇者」なんて呼ばれているが、その性質はかなりのバトルマニアである。強い相手とは戦いたいという性分で、マグナスとは何度も試合をして、勝敗は五分五分である。故に、ライバルと感じているマグナスが褒めるサヤがどれ程の者か、アリシアは確かめずにはいられなかった。


「『烈風の勇者』と言われる貴方にそう言われるのは光栄ですね」


「ほう……私の事を知っていたのか」


「直接会うのは今日が初めてですが、前に所属していたパーティーのリーダーや、先生がよく貴方の事を口にしていたので」


サヤは剣を向けられたというのに淡々とそう返す。今も昔も、ギリアスはアリシアの事を目の上のタンコブのように思っていたし、マグナスはアリシアの強さをサヤに話し、サヤにもそのような「魔剣士」になれとよく話題にしていたので、アリシアという名前を聞きアリシアを「烈風の勇者」であると判断したのである。


「ふふふ……ますます面白いな。君と本気で刃を交えてみたいよ。先程私の剣を受け止めたのだって本気の力を全く出してないんだろ?」


「それを言ったら貴方も先程の剣撃も本気ではないでしょう?」


サヤはようやくアリシアの方を振り向いて微笑みを浮かべる。アリシアもそんなサヤに笑みを浮かべる。

  一見すると、2人の見目麗しい美女が微笑みあってるように見えるが、その笑みはお互い牽制し合っている。それを間近で見ているマグナスとクロードは背筋に薄ら寒いものが走る。


「さて……クロード。お前が彼女に何を言いに来たかは分からないが、彼女は敵に回さない方が得策だぞ」


「はぁ!?何をいきなり……」


クロードが何か言う前に、アリシアは持っていた剣をクロードに見せる。


「なっ!?こ……!?これって……!?まさか……!?」


「そのまさかだよ。やれやれ……どこかいい腕の鍛冶職人に直してもらうか、また新しい剣を見つけるしかなさそうだよ」


アリシアに見せられた剣を見て驚愕するクロード。同じように剣を見ていたマグナスも同様に驚愕の表情になっている。

  何故なら、アリシアの剣の一部分にヒビが入っていたのだ。そしてそれは、先程サヤが片手でアリシアの剣を受け止めた箇所である。


(これは……もう……腹を割って話すしかないな……)


クロードはサヤの強さを痛感し、包み隠さず全てを話す決断をした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る