16.穴だらけの調査

「……いつから我々の存在に気づいていた?」


2人組の内、比較的に冷静を保っている方がサヤにそう聞いた。


「先程我々が見たエルフの双子……アレは防犯用の映像魔法だな」


「えぇ、その通りよ」


サヤの答えにその男は軽く舌打ちをした。

最近、空き巣等の被害対策の為に映像魔法を使い、その家に人が居ると思わせて諦めさせるという防犯魔法が開発された事は男は知っていた。しかし、たかが泥棒ならいざ知らず、自分のように魔法について知識がある者が騙されるとは思わなかった。それだけ、あの映像防犯魔法は完璧に作られていた。


(「テリュカ」にとってもあの双子の存在は重要と聞く。大方、国があらゆる「魔導師」を集めて作らせたのだろう……)


男はそのように推理した。あんな細部まで本物に近い映像魔法がたかがCランクの冒険者に作れる訳がないと……

しかし、実際はサヤ1人で作った物だ。しかも、映像防犯魔法とは言え、愛娘を完璧なまでに再現させた品である。その出来映えはAランク冒険者の「魔導師」ですら見抜けない物になっていた。が、サヤはそれを言うつもりない。本人的には普通に作っただけだから……


「防犯魔法を設置していたという事は我々の存在に気づいていたのか?いつからだ?」


男の問いにいちいち答える義理はないのだが、サヤはあえて答える事にした。この後、どうせまともに喋れなくなるだろうから……


「本当に最初からよ。商店街の人たちから、最近ラナとシアについて聞いて回る怪しい人がいるって話を聞いてたからね」


サヤの答えに男は再び舌打ちをする。「テリュカ」にいる噂のエルフの調査故、調査を下の人間にやらせたのがマズかった。念入りに聞き込みをし過ぎたせいでサヤの耳にまで入ってしまった。


「で、どう考えても怪しいから、色々対策させてもらったわ」


ラナとシアの事を聞いて回る人物。これが確実にラナとシアに接触してくると思ったサヤは、ラナとシアに、自分が家にいない時は、アロマさんの所に行き、合唱の特訓をするように言い聞かせた。アロマやディアスにも事情を説明して了承済みである。

そして後は、コロナにラナとシアは学校が終わると真っ先に家に帰るから、家にいるはずだと、もし知らない人がラナとシアの事を尋ねたらそう答えるように街の人にお願いするように頼んだのだ。街の人たちは喜んで協力してくれた。


「そして、後は網にかかるのを待つばかりの状態にしたのよ。まぁ、まさかコレを使って私の足止めをしようと画策するとは思わなかったけど……」


サヤはデコピン食らって気絶しているゴロを見て溜息をついてそう言った。

ゴロが自分に接触してきた時から、自分を足止めする為の物だと気づいていた。相手をしないという手も取れたが、向こうの油断を更に誘う為にあえて乗り、ゴロが去った後に、ゴロよりも早く家に行き、2人の犯行をしっかりと確認したのである。


「さて……これで質問タイムは終わりかしら?」


サヤはニッコリ笑って2人に聞く。その笑顔に、恐怖を感じた2人は思わず後ずさってしまう。が、そんな時だった……


「お待ちください。サヤ殿」


この場に突然新たな第三者が登場した。それは……クロコだった。

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