17.邪魔をするな

「テリュカ」の暗部部隊の隊長であるクロコは、実はもっと前から「マリステル」からの間者の2人を見張っていた。そして、2人がラナとシアを連れ出そうとした瞬間に2人を捕らえるつもりでいたのだが、予想外にもサヤがやって来たしまったのである。しかも、3人を連れて何処へ転移しようとするので、クロコも慌ててその魔法の範囲に飛び込んでやって来たのである。


「サヤ殿にお願いがあります。その2人を捕らえるのを私に任せていただけないでしょうか?」


クロコは頭を下げてサヤにそうお願いする。これは国と国の問題に発展する重要な案件。上手い事適切に処置しなければならない故のお願いである。まぉ、本音を言えば、サヤにやらせたら、精神が摩耗して上手く喋らない可能性があるからなのだが……


「あなたは確か……エイーダの周りをうろちょろしながら護衛してる人だったわね?」


サヤにそう言われ、クロコは平然を装っているものの、内心は物凄く驚愕していた。

実は、クロコは冒険者適正職業である「暗殺者」を持っているのだが、本人は冒険者のように派手な事を好まなかった故に、「テリュカ」の案部隊に入隊したのだが、「暗殺者」は文字通り影に隠れて敵を背後から奇襲するなどの技を得意とする為、気配を察知されないスキルは高い。特に、クロコは気配を消す為のスキルランクはSランクになっていて、人に絶対に気取られない自信があったのだが……


(嘘でしょ!?私の居場所を察知されていたって言うの!!?)


クロコは驚きのあまり心の中でそう呟く。確かに、クロコはサヤを何回も見かけてはいる。エイーダがよく城を抜け出しては商店街などに寄っていくので、影から護衛する必要がある。その時のサヤは自分に全く気づいた素振りなんて一切なかったはずなのに……


(いえ……あのサヤ殿だもの……あり得るわね……多分、私に敵意が全くないから放置していたとかそういう話なんでしょう……)


クロコはそう判断した。自分の気配が察知された事実に、悔しさよりもサヤだから仕方ないという気持ちが大きかった。それだけ、この国はサヤの異常な強さをちゃんと認識していた。


「それで……あなたのお願いだけど……お断りするわ」


サヤはキッパリとそう答えた。正直、クロコは「やっぱりな……」という気持ちが強かった。


「彼らは私の愛する娘達に手を出そうとしたのよ。それは……万死に値するわ」


サヤはそう言って「マリステル」の間者達の方を見る。「マリステル」の間者はそれを受けてまた後ずさってしまう。


「だから……邪魔をするな」


サヤは今度はクロコの方を見てそう言った。クロコはサヤから放たれた殺気に思わず全身から大量の冷や汗と、失禁までしそうになった。恐らく、邪魔をすれば間違いなく自分もやられる。サヤの瞳からソレをクロコは明確に感じ取った。


「……分かりました。この場はお任せします」


クロコには最早そう言って立ち去る事しか出来なかった。しかし……


「あぁ、待って。あなたの主人にも。こいつらを始末したら用があるから伝えてくれるかしら」


「…………承りました」


クロコはそう言って今度こそ本当にその場を去って行った。クロコの脳内エイーダが


「って!?承るなぁ〜!!?」


と、叫んでいたが、クロコにはもうどうにも出来ないので許してほしいと、自分の主人に小さく合掌しながら城へと向かって行った……

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