2章:父親と謎の暗躍者

1.サヤの幼き日の話

私はあの人が笑顔で家に帰ってくる姿を見たことがない


バタンッ!!!


「チキショウ!!また負けた!!今日はイケるはずだったのに!!あのクソディーラーの奴め!!」


あの人は必ずカジノで負けて帰って、怒って何度も部屋の扉を蹴破っていた。もう扉はあの人がいれた蹴りでかなり傷ついていた。


「おい!!サヤ!!早くメシを用意しろ!!!」


あの人から私にかける言葉は決まって命令だ。私はそれに従うしかなかった。従わなければ暴力を振るわれる。だから、幼い私はあの人の忠実な僕のように動くしか出来なかった。


私の母親は、この人のそんなところに嫌気がさして私を置いて出て行ったと言う。それも、あの人が言った事なので真実かどうかは分からない。ただ、真実として私は母親……いや、親の愛情を知らずに育ったのだった……


そんな私があの人の呪縛から抜け出せたのは、偶然にも私が無料で職業判定をしてもらった時、私に「魔剣士」の適正があるのが判明した。それを知ったあの人は……


「喜べ!サヤ!お前を雇い入れいってよ!しかも!あの「烈火の勇者」だ!!しっかり働いてこいよ!!」


あの人はニヤニヤ笑いながら私にそう言った。その態度から、私は多額の金額で売り飛ばされたのだとなんとなくだが理解した。



けど、なんでも良かった。この人の呪縛から抜け出せるなら。

それに、こんな私みたいなのでも、誰かを助けられるなら助けたい。そして、いつか……私みたいな人も救えるような素敵な冒険者に……



そんな淡い夢を抱き、私はあの人の命令通りに「烈火の勇者」パーティーの一員になった。そこでもまた、似たような境遇にあうとも知らず……




「…………ん?……夢……?」


サヤが夢から覚めると、そこは自分が作った見慣れた天井があった。ちょっと夢見が悪いので水でも飲みに行こうとするサヤだったが……


「ス〜……ス〜……」


「ん〜……ス〜……」


いつの間にか自分の両サイドを愛娘2人が奪ってるのに気づいて思わず顔が綻ぶサヤ。


「やれやれ……せっかくあなた達の部屋を作ったのにこれでは意味がないじゃないですか」


と言いつつも、とっても嬉しそうな顔をするサヤ。


『ん〜……お母さん……大好き……』


双子らしくシンクロした寝言に思わず身悶えそうになるのを必死に抑え、サヤはちゃんと2人に布団をかけ


「私も。2人の事が世界で一番大好きですよ」


サヤはそう言って再び眠りにつく。


今度は間違いなくいい夢が見られると確信があるから……

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