5.託された2つの生命
サヤは水の魔法で消火活動を続けながら生存者を必死で探していた。
「誰か……!?誰かいませんか……!?誰か……!!?」
すると、サヤは自分の足元にエルフの女性の死体を見つけてしまい、サヤは再び襲いくる吐き気を堪えようと必死になったが、その女性を見てサヤの吐き気が驚きで一瞬止まった。
「えっ……この人……まさか……!!?」
その女性は、サヤが与えられた自由時間で、エルフの里を1人でまわっていた時に声をかけられたのだ。その女性は占い師をしているらしく、サヤの将来を占ってあげると言われて、最初は断ったが、自分があまりにも暗い顔ばかりしてるから、気晴らしさせてあげたいという意味で声をかけてくれたらしく、サヤはその女性の占いを受けることにした。
「あなた……将来は凄い魔剣士になるわよ。諦めずにそのまま魔剣士でいるといいわよ」
サヤはその言葉に、気休めの占いとは言え嬉しかった。自分は将来魔剣士として、誰かを救える存在になれるかもしれないと思えたから……
しかし、現実はそんな希望をくれた人1人救う事すら出来なかった……
「うわあぁぁぁぁぁ〜ーーーーーーーーーー!!!!?」
悲しみに後悔に絶望に吐き気にと……色々なものが襲ってきて、自分を傷つけてしまいたい衝動に駆られるサヤ。
と、そんな時……
「誰か……ねがい……誰か……」
「ッ!!?声!?誰かそこにいるんですか!!?」
サヤは僅かに聞こえる小さな声がする方へと向かうと
「ねがい……します……誰か……」
1人の女性エルフが建物の下敷きになりながらも必死で助けを求めていた。
「大丈夫ですか!?すぐに助けますから!!?」
サヤは風魔法で彼女を下敷きにしている建物を退かし、すぐに彼女に治癒魔法をかけた。しかし……
「そんな……!?ダメなの……!!?」
彼女は勇者パーティーで支援魔法を使い続けていた。当然、治癒魔法も得意分野だった。しかし、いくら優秀なヒーラーがいたとしても、もう既に事切れる寸前の人を救う事は出来ない。
「私の事は……いいんです……どうか……この娘達を……」
エルフの女性は自分の身体を退けるように横たわると、そこにいたのは……
「えっ……双子の……赤ん坊……?」
それは、まだ産まれて間もない双子のエルフの赤ん坊だった。
「どうか……この娘達を……お願い……します……」
エルフの女性はそれだけ言い残して事切れた。
「いや!?待って!?お願い!!?いやあぁぁぁぁ〜ーーーーーーーーーー!!!!?」
サヤは結局誰1人救えなかった自分への悔しさと後悔と悲しみの涙を流し続けた。
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