29.黒髪の鬼

黒髪の鬼が奴隷商全体に広まったのは2年前だ


2年前、奴隷商でも一二を争う商会が潰された。それも、1人の若手がしっかり確認しなかった事から始まった悲劇である。


その若手が、「テリュカ」を訪れた時、ラナとシアを発見した。その若手は「テリュカ」を初めて訪れていた為あまり情報を得ていなかった。唯一得ていたのが、「テリュカ」の土地にいたエルフ里に住まうエルフが、スタンピードによって滅ぼされたという事だった。

だから、その若手がラナとシアを見た時、ラナとシアはその時の生き残りで孤児だと思った。その若手はラナとシアはやはり見た目の愛らしさは売れると思い、2人を無理矢理攫ってしまったのだ。


この時、その若手がもう少し「テリュカ」の人々にラナとシアの情報を収集していればその悲劇はきっと起こらなかっただろう。


若手がその2人を連れて商会まで戻って来た時、その背後に長い黒髪をなびかせた鬼がそこにいた。鬼なんて呼ばれる程、その黒髪の女から纏う雰囲気が鬼のそれに見えたのだ。


そして……その商会の人間は全てボコボコにされた上、商会の屋敷は剣によって真っ二つにされた。


が、それだけでその黒髪の鬼は止まらなかった。その黒髪の鬼は、その奴隷商会を支援していた貴族数家も潰した。もちろん物理的に。


故に、この出来事から、奴隷商全体に黒髪の鬼の伝承が広まり、奴隷商全体でラナとシアはブラックリスト入りになり、絶対に手を出してはいけないという奴隷商全体の決まり事になったのだった。




そんな、伝承の黒髪の女が今目の前にいる。奴隷商2人は震え上がり、股間はビジョビジョに濡れていた。


「私の娘達に手を出したのはあなた達?」


サヤは奴隷商2人を睨みつける。その絶対零度の眼差しに奴隷商2人は固まりそうになるが、固まっていては助からない。


「ち!?違います!?私達は何も知りません!!?」


「右に同じくですッ!!?」


2人はそう言うと、グラニフが制止の声を無視して一目散に逃げ出したのだった。




2人はこの後、奴隷商をやめて普通の商人になったが、その時の恐怖は今でも染み付いていて、夜時々思い出して漏らしてしまう事があるとかなんとか……

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