16.Bランクへの昇格はしません
コタロー達がダンクのパーティーに加入すること決まり、コタロー達がダンクと一緒に去って行った後、サヤは受付に大量の魔石を置いた。
「さて、なんか変な事に首を突っ込んで忘れてたけど、この魔石の換金をお願い出来ないかしら?」
「って、またスタンピードを一つ潰したんですか……って、そういえばそんな話してましたね……うわぁ〜……しかも一つアースドラゴンの魔石が混じってるじゃないですか……」
最早、10年同じように換金作業しているとはいえ、サヤのとんでもなさには毎度毎度驚かされるコロナ。とりあえず、テキパキと鑑定と換金作業を行い、換金したお金をサヤに渡す。
「はい。というか、もしかしてこれで目標金額達成ですか?」
「そうなるわね」
「わぁ〜……そっか……もう実家に帰ったらラナちゃんやシアちゃんの顔見られないし、サヤさんの料理をいただけたりしないんですねぇ〜……」
コロナは実家がアロマとディアスが経営している宿屋ではあるが、自分が受付の仕事をし始めて以来、自分の家を購入しているので、コロナは実家にはたまにしか帰っていなかった。
「別に。ラナとシアなら私がここで働いてる以上、こっちに顔出す事はあるでしょうし、料理なら言えばいつも世話になってるから作るわよ。って言うか、そんな理由がなくても実家に帰ってあげなさいって」
「えぇ〜……でも、最近お父さん歳をとったせいか加齢臭が酷くなってるし、ウザさも増してるからなぁ〜……」
「それ、絶対本人の前で言ったらダメよ……」
サヤは呆れたような目でコロナを見ながら溜息をついてそう言った。
ディアスは顔にはあまり出さないが、それはもう娘のコロナも溺愛している。恐らく、今のセリフをディアスが聞いたら三日三晩は寝込むであろう。
サヤにもその気持ちはよく分かる。もしも、自分が最愛の娘達にそんな事を言われたら……
『お母さん!!臭いし!!ウザい!!近寄らないで!!』
「おえぇぇぇぇ〜ーーーーーーーー!!?」
「ちょっ!?また変な想像したんですか!?」
コロナはすぐにエチケット袋をサヤに渡して、背中をさする。もうこれも毎度の事なので手慣れたものである。
「ごめんなさい。とりあえず、実家にはもっと帰ってあげなさい。いいわね」
「はいはい。あっ、ところで……サヤさん……」
「断る」
「ちょっ!?早い!?まだ何も言ってませんよ!!?」
「どうせB級への昇格試験を受けろって話でしょ。それなら毎度断ってるでしょ」
「いや……まぁ……その通りなんですが……」
コロナはそう言って疲れたように溜息をつく。
Bランク以上の冒険者には、迷宮攻略の為のパーティーリーダーになれる権限が与えられる。それだけのラクンの人物なら、下のランクの者を導きながら迷宮攻略出来るだろうとギルドも認めている。
しかし、当然ながらその為には厳しい試験がある。その試験をクリアした者がBランクへと昇格できる。そんな厳しい試験を乗り越えたはずなのに、ギリアスがあぁなのはサヤにも分からないが、ギリアスも一応優秀な成績で試験をクリアしている。
で、当然ながらギルド、いや、国としても優秀な冒険者は早くBランクへと昇格して、色んな迷宮を攻略してもらいたいと思っている。故に、Cランクでありながら、あらゆるスタンピードを潰してるサヤにも早くBランクへという要求はあるのだが……
「迷宮を攻略していたら、最低でも1日以上の時間を費やしてしまうわ。そうしたら、娘達の時間が減ってしまうし、何より、迷宮で見つけた物を仲間達で分け合うより、スタンピードを1人で潰した方が効率よく稼げるもの」
というサヤの主張により全部跳ね除けられている。本来なら、迷宮攻略の方が、迷宮で得た物にプラスして、ギルドからの報酬や、国からの援助金もあって稼げるのだが、スタンピードを1人で潰せて、尚且つ娘との時間を重視したいサヤにはあまり魅力のある話ではなかった。
そして、今日もサヤにBランクの昇格を受けてもらえないまま、サヤは魔石の換金したお金を持ってギルドを後にした。
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