17.エイーダ・テリュカ

サヤがお金だけ受け取り、さっさとギルドを後にして行く姿を見て、コロナは重たい溜息をつく。


「ふむ。どうやらまた勧誘に失敗したようじゃの」


「はい。そうなんですよね〜……って!?エイーダ様!?いつの間に!!?」


コロナはいつの間にか自分の隣にいた小さな女の子の出現に驚く。その子は、見た目はラナやシアと変わらないぐらいの身長だが、纏う雰囲気は子供のそれではなく、何より瞳が、魔物のドラゴン族に似た瞳をしていた。

この少女こそ、実は竜人でありテリュカの王であるエイーダ・テリュカ陛下その人である。見た目だけなら完全にコロナの方が歳上だが、コロナの何倍以上も生き、この「テリュカ」の王を何年も務めた傑物である。


「いつからと問われたら、あのアホな新米が問題を起こした時からかの」


「そんな前からいらっしゃったんですか!!?」


コロナはまさかの事に驚く。だったら最初から助けにきてくれたらとコロナは思った。何故なら、彼女にはそれが可能であるはずなのだから。


「あっ、いや、若い子はあまりエイーダ様を見た事ないですから、小さい子扱いしてバカにされて、サヤさんよりも酷い目にあわされたかも……そう考えたら出てこない方が良かったかも……」


「お〜い……コロナ!心の声がダダ漏れじゃぞ!」


エイーダがジト目でコロナを睨みつける。


「全く。ワシはお前よりも数倍生きておるんじゃ。たかが童ごときに小さい子扱いしてバカにされたぐらいで……」


「数日前、商店街で店の人達に小さい子扱いされてキレて暴れて、サヤさんにゲンコツくらって王城に強制送還されたのはどちら様でしたっけ?」


「さて、何のことか忘れてしもうたの〜……ピュ〜……♪」


エイーダは下手な口笛を吹き、明後日の方向見ながらそう誤魔化す。今度はコロナがエイーダをジト目で睨む。


「そんな事よりもじゃ!どうにかサヤの奴をBランクにするかじゃろ!」


「はぁ〜……と言っても、本人が希望しないのであれば、昇格試験は受けなくてもいいですし……」


「普通は皆望んで受けたがるんじゃがのぉ〜……」


大半の冒険者がCランクに上がったらすぐにBランクの昇格試験を受けたがる者ばかりだ。まぁ、まだCランク成り立てがBランクに昇格するのはあまり例はないのだが……


「実力だけで言えば間違いなくBランクなんじゃがな……」


「まぁ、そうですね」


Bランク以上の冒険者でも撤退を決めるスタンピードを1人で攻略出来るのだ。実力だけなら申し分ないだろう。


「いっそ、ラナとシアを懐柔するのはどうじゃ?」


エイーダはそう提案するが、コロナは首を横に振る。


「私も密かにやったんですが、お母さんに危険な労働させたくないというのが2人の総意なので……」


正直、今やってる事の方が危険極まりないのだが、2人の感覚は若干マヒしてる気がする。乳飲み子の時、背に2人を抱えながらスタンピード攻略した影響だろうか……


「ふ〜む……お手上げじゃの……」


「はい。お手上げです」


サヤはBランクにしたいこの国の王と、この国のギルド職員は、2人揃って重たい溜息をつく事しか出来なかった……

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