15.10年前の「武闘祭」
それは、10年前のテリュカ「武闘祭」の日……
サヤはその日初めて「武闘祭」に参加した。参加選手は皆サヤに注目していた。
それは、女性でしかも年齢がまだ15歳というのが珍しいのもあるし、その年齢でスタンピードを何回も潰した実績を評価され、あっという間にDランクまで昇格した噂の冒険者というのもあるのだが、皆が注目していたのは別の事だった。
『おぎゃあぁ〜!?おぎゃあぁ〜!?』
「あぁ!?ごめんなさい!ラナ!シア!うるさいですよね〜!ですが、もう少しだけ我慢していてくださいね〜!」
なんと、サヤはまだ当時0歳児のラナとシアをおんぶ紐でくくって背負いながら参加したのだ。この姿に参加者だけでなく、審判や観客らも唖然とした表情を浮かべていた。
当時のサヤは、アロマからの命題もあって、自分1人でラナとシアを育て上げる必要があった。故に、この大会にもラナとシアを背負って参加したのだ。
それなら、参加せずに2人をしっかり育てろよという話なのだが、サヤは2人を育てていく為の資金を稼ぐ為に、「武闘祭」の優勝賞金が欲しかった。故に、サヤは2人を背負いながら参加したのだった。
しかし、2人を背負いながらだと色々トラブルは起きるもので、それはサヤの1回戦目の事……
「それでは!試合!開始!!」
『おぎゃあぁ〜!?おぎゃあぁ〜!?』
審判の試合開始の合図と共に、突然泣き出す2人。サヤは2人の泣き方から、2人が何で泣いてるのかを察した。
「あぁ!オムツが汚れてしまったんですね!待っていてくださいね〜!すぐに替えますからね〜!」
サヤはそう言って試合が開始されているにも関わらず、2人のオムツをいそいそと替え始める。このサヤの行動に、審判も対戦相手もしばし呆然としていたが……
「おい!ふざけるのもいい加減にしろ!やる気がないならさっさと降参しやがれ!」
対戦相手が怒ってサヤに近づいていくが
「やかましい!今2人のオムツを替えてんだからあっち行ってろ!!」
「ぐぼほぉあぁ!!?」
サヤは近づいてきた対戦相手を思いっきりぶん殴り、対戦相手はまるでボールのように弾かれながら、場外まで吹っ飛ばされていった。
「……えっ……えっと……しょ!勝者!!サヤ・フィーリガル選手!!」
場外に出るのも敗北というルールなので、審判はサヤの勝利を宣言する。サヤはその勝利宣言よりも、アロマに教わった通りにきちんとオムツ替えが出来て満足そうに微笑んでいた。
で、その後も色々ありながらも、サヤは難なく対戦相手を倒していった。唯一サヤが苦戦していたのは決勝戦のダンクとの試合だった。
というのも、サヤはダンクがマグナスと互角に剣撃を打ちかわせる程の猛者だと知り、序盤は剣の腕のみでダンクに挑んだのだが、やはり、マグナスと互角に戦える腕前の持ち主だけあって、剣の腕だけでダンクに勝つ事が出来ず、師匠超えよりも、優勝賞金を優先する為、サヤは得意魔法を行使してダンクを打ち負かした。
この当時、サヤがそんな事を言っていたのを知ったダンクは
「サヤはあの子供らに俺の攻撃が絶対に当たらないように気を配りながら戦っていたからな。もし、あの2人を背負いながらじゃなかったら、負けていたのは確実に俺だったろうな」
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