20.サヤが受けた理由

サヤがまさか引き受けるとは思わず、ラナとシアとコタローも呆然とサヤを見つめている。サヤはそんなコタローの反応に首を傾げる。


「なんで驚いているのですか?頼んできたのはそちらでしょう?」


「あっ……いえ!?その……サヤさんは忙しい方なので、正直断れるのも覚悟のダメ元でお願いしにきたので……」


確かにサヤはCランク冒険者ではあるが、Aランク級の冒険者が引き受けるような仕事もしている。「迷宮」の攻略以外の仕事を全て引き受けているので、忙しいと言えば忙しいのだが……


「別に仕事なんて2、3分もあれば片付きますので」


これは実際にその通りの話で、サヤにかかればS級の魔物もそれぐらいの時間で討伐出来る。スタンピードなら討伐依頼より少し時間がかかる程度である。


「それに、今は「武闘祭」の時期ですしね」


「武闘祭」の時期になると、冒険者は「武闘祭」で優勝する為に色々準備をしなければいけないので、なるべく仕事を入れないように、国もギルドも調整をしている。もう「武闘祭」まで後1週間なので、サヤの仕事も無くなっている。あるとすれば、突発的に発生するスタンピードの対処ぐらいだ。


「まぁ、それに私も誰かの為に強くなりたいという気持ちは分かりますし……」


サヤはコタローが弟子入りをお願いした時、ふと自分がマグナスに弟子入りした時を思い出していた。あの時のサヤは、あの父親から抜け出す為には冒険者であり続けたいという気持ちもあったが、同時に、こんな自分が誰かの役に立てるなら強くなって役に立ちたい。自分を見出してくれたパーティーに貢献したいという気持ちもあった。まぁ、その気持ちは最悪な形で裏切られた訳だが……

そして、今のサヤは最愛の娘達の為に強くありたいと願っている。そう思っているサヤだからこそ、コタローの強い気持ちが痛い程に分かったのだ。まぁ、コタローのほんの僅かな淡い物には全く気づいてないのだが……


「しかし、私も人に教えるのは初めてですので、上手く教える自信はありませんがそれでも構いませんか?」


「はい!!もちろんです!!!よろしくお願いします!!!!」


コタローは嬉しそうに立ち上がって頭を下げた。そんなコタローを見て、ラナとシアは不満そうに唇を尖らしている。



だが、この時のコタローはまだ知らない。サヤに剣を教わるその恐ろしさを……

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