21.波乱を乗せて……

一方その頃「マリステル」では……


数日後に行われる「テリュカ」武闘祭の招待を受け、王侯貴族達が馬車に乗って出発していた。そして、第三王子であるクロードを乗せた馬車では、クロードとクロードの護衛を引き受けた「烈火の勇者」パーティー一同を乗せて走っていた。


(よくあのギリアスを説得出来たな)


クロードの隣に座っていたマグナスが小声でクロードに耳打ちした。


(なぁに。ちょっとお酒と女を提供したらアッサリだったよ)


(……なるほど……そういう事か……)


マグナスはそれを聞いて思わず額を抑える仕草をする。要は、クロードはギリアスに接待をして承諾を得たのだろう。本当なら、クロード的にらマグナスだけを獲得したかったのだが、それはギリアスからもギリアスのパーティーメンバーからも不満が出るだろうし、マグナス本人も渋る可能性があったのでパーティー一同を雇ったという訳だ。

ちなみに、ギリアスは先程から「何でこの俺が第三王子の護衛なんかを……」とブツブツと文句を言っていた。クロードが王子であれど王位継承権がないのは周知の事実なので、そんな者の護衛をするのがプライドが許さないのだろう。まぁ、自分が酔った勢いとはいえ許諾した事なので今更断るようなマネは流石にしなかったが……


(これでサヤに会ったらどうなるのか……)


マグナスはそんな一抹の不安を抱えて内心重たい溜息を吐いた。


だが、クロードから言わせれは不安の種はそれだけではない。先程、何故か自分の護衛として選ばれた娘のアリシアを連れて不服そうな顔をしたムスカがくれた情報によると……


(ユーリ兄が雇ったのは「美の勇者」で噂になってる美形揃いの集団だったな。大方、コイツらを使って双子のエルフを誘惑しようって腹積もりか……だが、1番ヤバいのはローレン兄か。こいつら確か昔若い娘攫って奴隷市場に売ったとかの容疑がかけられてる奴らだぞ……)


2人の兄が選んだ護衛に思わず頭が痛くなり、クロードは本気で重たい溜息を吐いた。



こうして……様々な思惑を乗せた馬車が「テリュカ」へと向かって行く……

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