四章:テリュカ武闘祭開催
1.「テリュカ」は完全にお祭りムードへ……
そして、時は経って翌日にはテリュカ武闘祭の開催の日となった。「テリュカ」の王城にはすでに各王侯貴族達が招き入れられ、祭への高い関心や談笑などを交わしていた。もちろん、「マリステル」の第1王子のユーリや、第2王子のローレンも談笑を交わしてはいたが、それぞれ腹の中では今後の為の事で、すでに駒を動かしつつあった……
さて、そんな様々な思惑が蠢いてる中、サヤは2人の愛娘を連れて祭を楽しんでいた。お祭り一色の市場の屋台を見て目をキラキラさせているラナとシアを見ていると、10歳にしてはしっかりとしているなと思ってる娘達の年相応の可愛らしさに、サヤは胸が暖かくなった。
「ねぇ!お母さん!私あの金魚すくいやりたい!」
「私はあのわたあめ……いや、焼きとうもろこしも捨てがたい……」
ラナは遊び関連の屋台に、シアは食べ物関連の屋台に興味があるようだ。見た目はそっくりな双子ではあるが、こういうところは全く違う2人に思わず微笑ましくなるが、一応自分は母親なので言わなくてはいけない事がある。
「2人共。屋台に夢中になるのはいいですが、お小遣いはあげた分だけですよ。無駄遣いしては絶対にいけませんよ」
サヤは母親らしくそこは厳しく2人にそう言うと、2人は『は〜い!!』と元気よく返事をしてそれぞれ興味がある屋台に向かって行った。
「ふふふ……やれやれですね。アレでは私が渡したお小遣いを使い切ってしまいそうですね。まぁ、念の為に多めには渡してありますが……」
サヤは微笑を浮かべてそう言った。
まぁ、そうは言ってもサヤは2人がやたらめったらと無駄遣いすような事はないとは思っている。しかし、2人が狙われているという事実がある以上、念の為にお金は持たせておきたかった。まぁ、そもそも2人に何かあってもサヤならいつでも即座に対応出来るのだが……
「さて……2人を見守っていたのはやまやまですが、2人が楽しんでる所に親が交じるのは流石に無粋ですからね……」
いくらサヤでも、親がいたら子供がしっかり楽しめないのは分かっていた。正直寂しさは拭い去れないがこればかりは仕方ない。とりあえず、自分も適当に屋台を見て回ろうとサヤは思った。
「確か……いつも行く本屋が古本市をやると言ってましたね。何か掘り出し物があればいいんですが……」
サヤはそう呟きながらいつも通っている本屋へ足を向けようとすると……
「サヤ……なのか…………?」
突然、懐かしい人の声によく似た声がして、サヤは思わず後ろを振り返り、サヤは更に驚愕する。
「……先生……?」
そこにいたのは、10年前よりもほんの少しだけ背が高くなり、顔つきもだいぶ大人な顔立ちになったが、間違いなくその人は……サヤの剣の師であるマグナス・リットンだった……
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