14.照れてます?

サヤは次にエリナに近づく。先程の騒動があってエリナは怯えて一歩後ずさる。


「女の子が傷を残すものではないわ」


サヤはそれだけ言ってすぐにエリナから離れる。エリナはその言葉に首を傾げるが、徐々に自分の身体に起きた変化に気づく。


「えっ?あれ?痛みが……無くなってる?」


ついさっきまでのエリナは、サリーの治癒の力が至らず、身体のあちこちに暴行を受けた痛みがあったのだが、それが綺麗サッパリ無くなってるのだ。しかも、変化はそれだけではなかった。


「エリナちゃん!鏡!鏡見てみて!」


「えっ……うわぁ!?顔の傷跡や腫れも完全に無くなってる!?」


ついさっきまでは、スバルの暴行により、いくつかの腫れや痣、傷跡などが多くあったのだが、それも綺麗サッパリ無くなって、本当に暴行されたのか?と疑問に思う程綺麗に無くなっていた。


「あの……!その……ありがとうございます!!僕達の仲間を治療してくれて!!」


コタローはサヤにそう言って頭を下げる。続いてサリーとエリナも頭を下げる。


「……別に大した事をしたつもりはないわ」


サヤはなんて事ない感じにそう言い放つ。実際サヤは別に大した事をしたつもりはなかった。エリナを見て、自分の娘達も理不尽に暴力を振るわれたら……と考えたら身体が勝手に動いてしまっただけである。


「それだけじゃなく!スタンピードから僕達を助けてくれた事も!本当にありがとうございます!!」


「それこそ大した事はしたつもりないわ」


スタンピードを潰すの自分の役目のように感じてるサヤにとって、それは最早仕事の範疇のようなものだ。それになにより、サヤにとってスタンピードは憎む対象であり、娘達の養育費を稼ぐ場だ。そう言った意味も含めてサヤにとっては大した事ではないのだが


「それでも!あなたに助けられた事は一生忘れません!本当にありがとうございます!!」


物凄くキラキラした瞳でお礼を言うコタロー。そのコタローの見え隠れする気持ちに、サリーとエリナはムッとなる。


「……大げさな子ね」


「あれ?もしかしてサヤさん。照れてます?」


「なっ!?照れてないわよ!!?」


そう言うも、サヤの顔は若干赤い。

サヤはこの冒険者稼業をやってきて、同業者からはやっかみを受ける事が多く、一部の人からは化け物扱いされたりして、純粋な好意によるお礼を言われた事があまりない。まぁ、自分の大好きな娘達さえ無事過ごせるなら、その辺はあまり気にしてはいなかった。

なので、サヤは純粋な好意によるお礼をまともに面と向かって言われた事がなかった。だから、こんな反応になるのも無理からぬ事であった。


「しかし……コタロー君達は……今後はどうしますかね〜……」


コロナは軽く溜息をついてそう言う。コタロー達のパーティーはスバルがリーダーだった。それがあぁなってしまった以上は、事実上パーティーは解散したようなものである。


「あの……その……出来るなら僕は……」


コタローはチラチラとサヤを見ながらそう言う。それで、コロナはコタローがサヤに淡い恋心を抱いてる事に気づいて心の中で溜息をつく。

サヤは25歳にしては、まるで10代のような若々しさに、大人の雰囲気を併せ持っている為、コタローのように一目惚れするパターンが多い。まぁ、だいたいが玉砕するか、娘がいると知って諦めるのが多いのだが……コタローの場合は淡い恋心に加えて、サヤのようになりたいという憧れもあるようだが……


しかし、コタローがサヤのパーティーになる事はない。その一つ目の理由として、サヤ自身がパーティーを作るのを拒否してるからである。その理由として曰く


「仲間に合わせて娘達の時間が割かれたら困るから」


である。故に、どれだけコタローがサヤに申し込んだとしても無駄だろう。

そして、第2の理由としてはギルドの問題で、サヤは超特例でスタンピードの対処を認められてるが、基本他の冒険者はスタンピードの対処は報告のみとなってる。当然、自分の稼ぎ場であるスタンピードにサヤは突っ込んで行くだろうから、それを新米冒険者にさせる訳にはギルド的には容認出来るはずがない。


故に、どうやってコタローを説得すべきかコロナが悩んでいると……


「なら、俺達でそこの3人を引き取ろう」


そう言って現れたのは、「テリュカ」のBランク冒険者の牛族獣人のダンクだった。

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