10.スバルの虚偽報告

一方、そんな問題が起きてるとは知らずに、「テリュカ」の冒険者ギルドで長年受付をしているコロナが、いつも通り自分の定位置で立っていると……


カタン!


「コロナさん。すいません。報告に来ました」


「あっ、スバル君。お待ちしてましたよ」


コロナはニッコリと笑って出迎えた。コロナはギルドの受付役としてちゃんと冒険者1人1人の顔を把握しているように努めていた。故に、スバルだけしかいない事に首を傾げる。


「あれ?コタロー君やエリナちゃんやサリーちゃんは一緒じゃないんですか?」


コロナのその言葉を受けて、スバルは俯き、何とかコロナの見えないようにして舌打ちをしたが、スバルはすぐに悲痛そうな表情を浮かべ


「それが……その……」


スバルの説明によると、バジリスク戦で、エリナが大怪我をしてしまい、そのショックからコタローとサリーは冒険者を辞める宣言をし、エリナは怪我が酷くて動ける状態にないと言う。


「そうですか。それは大変でしたね」


「はい。そうなんですよ……」


スバルは顔では悲痛そうな表情を浮かべながらも、内心では「うまくいった」とニタニタとやらしい笑みを浮かべていた。


が、コロナは……


(これは……嘘をついてますね。後で治癒院全部に問い合わせてみましょう)


長年冒険者ギルドの受付をやっているだけあって、スバルの嘘を一発で見抜いていた。見抜いていて、頭の中で色々対処方法を考えていたら……


「待ってください!!彼の報告は全部デタラメです!!!」


「なっ!?お前らは!!?」


なんともベストなタイミングでギルドに入って来たのは、コタロー達3人だった。スバルは、コタローやサリーが生きている事に驚愕する。まさか、スタンピードに出くわして、2人が生き残っているとは思ってもみなかった。


「何で……!?お前ら……!?生きて……!!?」


「生きて?それは不思議な発言ですね。確かスバル君の報告によればエリナさんは大怪我していても、2人は無事だったと言っていた気がしますが?」


「そ……それは……!?」


コロナの正論に何も言えなくなるスバル。このまま待ってもスバルから答えが返ってこないと判断したコロナは、コタローに問う事にした。


「とりあえず、コタロー君。話を聞かせてもらえますか?」


「なっ……!?待て……!?それは……!?」


「全部あった事を説明します」


スバルは慌てて止めようとするが、この場で止めるようなマネが出来るはずもなく、結局、コタローによって全て明るみになった。バジリスクを倒した後、スタンピードに遭遇し、コタローとサリーを見捨てた事も、その後、エリナに暴行を加えた事も全部だ。


「僕からの報告は全部です」


「……先程の報告と随分と違いますが、どういう事か説明していただけますか?スバル君」


「……た!確かに!?スタンピードで2人を見捨てしまい!?それが発覚するのが怖くて虚偽報告したのは事実だ!?だけど!エリナへの暴行はしていない!!!」


「なっ……!?」


ここにきて、スタンピードや虚偽報告については免れないと思ったのか、その事実は認めたが、エリナへの暴行は認めようとしないスバル。少しでも罪を軽くする為の手段を取り始めたのだ。


「嘘です!!私は彼に何度も暴行を受けました!!?」


「はん!大方2人が生き残っていたのを見つけて、自分の罪を軽くする為にそうしたんだろう!証拠もないのに出鱈目を言うなッ!!!」


コロナは心情的にはエリナの言葉の方が正しいと思っている。彼女の顔には、サリーの治癒魔法で腫れは引いているが、いくつもの傷跡がある。女の子がいくら自分の罪を軽くする為とは言え、自分の顔を傷つけるなんておかしい。

しかし、スバルの言う通り、彼女がスバルに暴行されたという証拠がこの場にないのも事実だ。コロナが困った表情を浮かべていると


「証拠ならあるんじゃない」


「あ!?あなたは!!?」


今度はコタローとサリーが驚いた。この場に更に現れたのは、コタローとサリーをスタンピードから救ってくれたサヤ・フィーリガルであった。

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