19.吸収しきれない程の力

彼は目の前で起きた事が信じられなくて、しばし呆然としていたが、すぐにサヤに問い詰めた。


「貴様!!?一体何をした!!?」


その問いに対するサヤの返答は……


「別に何も」


の一言である。これに彼は信じられない気持ちが抑えられずもう一度「魔法拘束鎖」を発動。今度もまた「魔法拘束鎖」はサヤを捕らえる。サヤも特にこれといった抵抗をしていない。


しかし…………


バキンッ!!!!


「んなぁ!!?」


結果は先程と同じ。サヤを拘束していた鎖は、サヤを拘束した後すぐに粉々に砕け散ってしまう。


(そんな……!?バカな……!?あり得ん……!?あり得ないぞ……!!?)


自分達の切り札である「魔法拘束鎖」がアッサリ砕け散ったのもそうだが、彼があり得ないと思っているのは、サヤが本当に何もしていない事だ。

彼も魔法を使う者だ。何かしらの魔法を使用したら嫌でも気づく。だから、サヤが魔法を使っていない事は彼が一番分かっているし、そもそも、鎖に捕らわれた状態では魔法が発動出来ないはずなのだ。サヤが馬鹿力で鎖を引きちぎるといった事すらしていない。


(そんなバカな事……絶対にあり得ん……!!!!)


彼はそれでも目の前の出来事が信じられず、それでも、更に「魔法拘束鎖」の数を更に増やし、今度はサヤをグルグルに縛って完全に身動きがとれないように拘束する。この方法はBランクやAランクなどの冒険者に対応するやり方で、Cランク冒険者に使ったのは彼らも初めてだが、これなら大丈夫……と、思っていたのだが……


バキンッ!!!!


「んなぁ!!?そんな!?バカな!!?」


結果は同じ。拘束して1分も保たずにアッサリ砕け散った。


「くっ!?お前も手伝え!!?」


「はっ!!はい!!!」


彼は衝撃的な光景に呆然としていた相方に、「魔法拘束鎖」を発動するように指示する。

こうする事で、鎖も更に増え、精霊の力も倍に増える。使った事はないが、「勇者」称号を与えられた冒険者をも拘束出来ると彼らは考えている。

そして、彼らの連携技による「魔法拘束鎖」はサヤを完全に捕らえる。やはり、サヤは無抵抗に捕らわれる。しかし、今度こそは間違いなくサヤを拘束出来る……はずだった……



バキンッ!!!!バキンッ!!!!


「そ……!?そんなバカなぁ〜ーーーーーー!!!!?」


再びアッサリと砕け散った鎖を見て彼はその場で膝をついた。


(そんな……そんなバカな事があり得るというのか……!!?)


彼にはサヤが何の抵抗もしてないのに鎖がアッサリ砕け散ってしまう原因がなんとなく分かっていた。だが、分かっていたとしてもあり得ないという気持ちでいっぱいだった。


(大地の精霊の力を使っても奴の力を吸収しきれないというのか……!!?)


地の精霊を通して大地の力で、拘束した者の力を吸収する「魔法拘束鎖」だが、当然、力が強すぎれば吸収しきれずに砕け散るの必然。だが……


(Aランク冒険者でも……「勇者」称号をも持つ者ですら捕らえる方法を用いても吸収出来ないという事は……)


それは、彼……いや彼でなくても信じられないかもしれない




サヤ・フィーリガルの力はすでに「勇者」称号を抱く冒険者よりも遥かに上回っているという事を……

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