20.下降魔法

圧倒的な強さを実感し1人が完全に自信を喪失してしまっている。案外あっけなく終わったなとサヤは思っていたが……


「しっかりしろ!!まだだ!まだ俺達には冒険者対策の技がちゃんと残っているだろう!!!」


もう1人の男が、自信喪失で崩れ落ちそうになっている者を鼓舞した。その男の鼓舞で崩れかけた気持ちをどうやら取り戻したらしく、2人で再びサヤを睨む。

正直、さっさと終わらせようかとも考えていたサヤだったが、せっかくなので、最後の切り札すらも打ち砕いてからにしようと思い、いつものように悠然と仁王立ちした。

2人は再び何かの呪文を唱え、数分後、2人の魔法が発動。サヤは2人に魔法をかけられた。しかし、サヤは特にどこにもダメージを負っていない。


「攻撃魔法かと思って驚いたか?ふん。敵を倒せるのは攻撃魔法ばかりではない」


「そうだ!お前達冒険者は知らないだろうが、冒険者ってのは下降魔法にかかりやすいんだ!」


彼らがサヤにかけた魔法。それは…………下降魔法だった。


彼らの言う通り、冒険者は実は下降魔法に非常に弱い。というのも、冒険者がよく相手をする魔物は、状態異常を与える魔物はいるが、相手のステータスを下げるような攻撃をしない。状態異常とステータス下降は似てるようで違う為、冒険者は基本下降攻撃による耐性がない。故に、冒険者達は下降攻撃はかかりやすいのである。

この事実に彼らが気づいたのも、冒険者を倒したいという彼らの執念の賜物だった。よって、彼らは攻撃魔法よりも下降魔法に注力し、冒険者を自分達より弱くして捕縛するという事を何回も行なってきた。


「くくく……各ステータスを大幅に下げる上級の下降魔法だ。思うように動けまい」


「しかも、俺達2人分だ。これでお前は最早どうする事も……」


自分達の下降魔法を受け、サヤはもうどうする事も出来ないと2人は信じて疑わなかった。ある意味、下降魔法こそが冒険者対策の最大の切り札だから。


が、しかし……2人は前を向くと、そこに先程までいたはずのサヤが居なくなっていた。一体どこへ?と2人はあちこちを見回したが……



「あなた達の下降魔法ってこの程度?」



そんな声が2人の背後から聞こえ、2人は恐る恐る後ろを振り向くと……いつの間にか2人の背後にサヤが先程見かけた時と同じように立っていた……


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