21.格の違い
一瞬で彼らの背後に回り込んだサヤに動揺する2人。
「まさか!?また転移の魔法か!!?」
「いいえ。あなた達の背後に行くのに転移の魔法を使うまでもないでしょ。普通に走っただけよ」
サヤの言葉に更に驚愕する2人。だが、サヤの言葉が嘘だと2人には言えなかった。
転移の魔法は強力な魔法の一つである。そんな魔法を使えば、仮にも魔法が使える2人にも分かるはずだ。現に、前にサヤが転移の魔法を使った時は、わずかながらも魔法を使った気配を感じていた。
なので、彼らの心は彼女の言葉が正しいと思う反面、そんな事はあり得ないと思う気持ちが混ざり合っていた。彼らに察知される事もなく背後に回り込む脚力もそうだが、何よりサヤは2人で上級の下降魔法をかけたばかりである。上位ランクの冒険者でも亀のように遅くなってるはずである。
「そういえば……」
サヤは握り拳を作り、そのまま誰もいない場所に殴るように腕を振るった。当然、そこには何も誰もいないので、拳が虚しく空を切るだけのはずなのだが……
ドッガガガガガガァ〜ーーーーーーーーンッ!!!!
「んなぁ!!?」
サヤが拳を振るった数m先にあった木々のほとんどが何かの衝撃を受けたように倒れ始める。そのあまりにも衝撃的な光景に驚き目を見開く2人。
「これで私のステータスが下がってると言える?」
サヤは冷笑を浮かべ2人を見てそう言った。
そのサヤの問いかけに2人はしばし沈黙するしか出来なかった。しかし、もうこんなものを見せられたら認めるしかない。サヤには2人がかけた下降魔法が全く効いてないという事実を……
「だが……一体どうやって……」
思わず2人の内の1人がそう呟いた言葉を、サヤは聞き逃さなかった。
「どうして効かなかったって?答えは単純よ。あなた達が下降魔法かけた後、私が上昇魔法をかけてそれを相殺させたのよ」
「んなぁ!?そんなバカな!!?」
「あり得ん!!?そんな事は絶対にあり得ないぞ!!?」
2人はサヤの言葉に驚愕と否定の叫びをあげる。2人がかけたのは上級の下降魔法だ。それを相殺するとなれば、同じぐらいの上級の上昇魔法を、しかも2回発動する必要がある。それを一瞬で行うなど絶対にあり得ない。普通ならば……
しかし、残念ながらサヤは普通ではなかった。
そもそも、サヤはステータスを下げる効果の攻撃を無効化するスキルを保持していた。が、あえてサヤはそのスキルを使わないようにし、あえて2人の下降魔法を受け、そして、2人の下降魔法がかかった状態で、下級の上昇魔法一回発動するだけでそれを相殺したのである。2人とは完全に格が違っていた。
「私にとって支援系魔法は呼吸するのと同じ感覚で使えるのよ。こんな風にね」
サヤがそう言った次の瞬間、彼ら2人は突然強烈な重さが加わって立ち上がる事が出来ず、その場にしゃがみ込んでしまった……
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