10.アロマの想い

サヤが俯いた事に気づいたディアスはバツが悪そうに頭をかいた。


「すまん……別にお前を責めてる訳じゃないんだ……」


「いえ。大丈夫です」


サヤはそう言うが、サヤは今でもあの日の事を気にしている。あの日、もっと自分が早く気づいて向かっていたら……そう思わない日はない。例え、あの時の自分の力ではどうにも出来なかったのだとしても……


「……まぁ、だからだらうな。アロマがアレだけラナとシアを気にかけ、2人を育てたいというお前も気にかけるのも……」


それはサヤにもなんとなく分かっていた。ラナとシアは唯一の同郷のエルフだ。そのエルフがもういなくなるのはアロマにも耐えられないだろう。故に、サヤにあんな試練を課したのだろう。


「同時にアロマはお前を羨ましく思ってるかもしれない。彼女は家庭と冒険者の両立は不可能だと思って冒険者を辞めた。だが、お前はその家庭を守る為に冒険者をやっているからな。だからこそ、お前が本当に2人を見守りながら冒険者を続けられるか見定めたんだろう」


ディアスの言葉に、サヤはどこか厳しい眼差しで自分を見つめているアロマの姿を思い出した。自分には出来なかった事を本当にサヤに出来るのか?あの眼差しはそんな意味がこもってたんだなとサヤは改めて実感した。


「今更こんな事言われなくても大丈夫だと思うが、ラナとシアをしっかり守ってやるんだぞ」


「はい。それはもちろん当然です」


ディアスの言葉にサヤは即答した。それこそ、サヤが今生きる意味でもあるのだから……



「あ〜な〜た〜」


突如、そんな声がしてディアスは肩をビクッと震わせて声のした方を振り向くと……いつの間にかラナとシアの特訓が終わったのか、アロマが2人を連れてこちらにやって来ていた。


「サヤちゃんと随分と楽しそうな会話をしてたみたいね?」


「いや……!?それは……!?その……!?」


アロマの問いかけに、ディアスは冷や汗をダラダラ流しながらしどろもどろになる。アロマはいつもの笑顔だが目が全然笑っていない。サヤでも若干引くぐらいのプレッシャーすら放っている。


「私にもサヤちゃんに聞かせた会話を教えてもらおうかしら?」


「……はい。すいません」


ディアスは完全に敗北し、アロマに連行されていく。サヤ達はそんな2人を呆然と見送る事しか出来なかった……


「……とりあえず晩ご飯の支度をしましょう」


「うん。そうだね」


「触らぬアロマさんに祟りなし」


最後のシアの言葉に同意のサヤとラナは、三人一緒に家に戻り、いつものように楽しい夕ご飯をとることにした。その途中で、珍しく実家に帰ろうとしたコロナが慌ててサヤの家に避難してきて、4人での夕ご飯になったが……


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