8.サヤの謝罪

  クロードは「マリステル」の現状を包み隠さずにマグナスやアリシアも含めて伝えた。ちなみに、アリシアは先程剣を向けたサヤの隣に腰かけ、サヤにこの喫茶店のオススメを尋ねて注文していた。アリシアもそうだが、先程剣を向けられた相手に特に気にした様子もなく対応するサヤの神経にクロードは信じられない気持ちでいっぱいになった。


「……まさか……王都と呼ばれている「マリステル」がそこまで腐りかけていたとは……確かに、貧富の差や、魔物問題に、横柄な冒険者といった問題は目にする事はあったが……」


マグナスは自分が暮らす王都がサヤの娘達を無理矢理連れて来ようとする動きをみせるまで腐り果てている事に驚きを隠せなかった。「マリステル」の問題をいくつか目の当たりにしていても、ここまで酷かったとは予想すらしていなかった。


「そして、やっぱり父上は反対派か。まぁ、当然だな。父上は慎重派の人だ。「テリュカ」と戦争になるリスクがある事は避けたいだろうな」


アリシアは「マリステル」の現状を聞いても特に驚いた様子を見せず、コーヒーを飲みながらそう話した。


「王都の実情はハッキリと分かりました。それで、クロード王子は何故先生を使ってまで私と接触しようと思ったのですか?」


「そうだな。半分は親友であるマグナスの為だな。10年間も愛弟子を追放させてしまった事をずっと悔いてる姿は若干痛々しいものがあったからな」


「ちょっ……!?クロード……!?何を勝手な事を……!?」


マグナスは再び立ち上がってクロードを睨むが、クロードはニヤニヤ笑ってマグナスを見るだけだった。そんな2人のやりとりを見ていたサヤは


「……すみません。先生」


「なっ……!?サヤ……!!?」


サヤは頭を下げてマグナスに謝罪したので、マグナスは困惑し始める。サヤはそんなマグナスに構わず言葉を続ける。


「私の事をずっと気にかけてくださっていたのに、私は娘達を立派に育て上げる事に必死で、恩師である先生に連絡を渡す事もしませんでした。本当に申し訳ありませんでした」


「あっ……いや……まぁ、サヤにはサヤの事情があったんだし、ギリアスにあんな事を言われて追放されたんだ。未だにギリアスのパーティーの所にいる俺に連絡を渡さないのも当然だ……」


  マグナスは再び椅子に座り、サヤの方を見てそう答える。


「それで、もう半分の理由だが…………サヤ・フィーリガルがどういう人物かを見極める為にやって来た」

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