10.サヤの後悔と贖罪と決意
サヤがハッキリと告げ、クロードは数秒目を閉じた後、再びサヤの目を見て
「理由を聞かせてもらってもいいか?」
クロードはサヤにそう尋ねた。クロードは断れる可能性が高いと考えていたが、今サヤと直接対面して疑問に感じた事があった。
「君に直接会って実感した。君は育てているエルフの双子ちゃん達を本当の母親同然に愛してるって。君の目は……俺という存在で色々言われてきただろうに、それでも俺に笑顔を向けて育ててくれた母親の顔と同じだったから……」
クロードの言葉を受け、サヤは少し驚いたように目を見開くも、黙ってクロードの言葉の続きを待った。
「君が本当にあの娘達を大切に想ってるなら、俺の提案を受けた方が、絶対に娘達を守れるはずだ。それなのに、この「テリュカ」に留まる理由は何だ?」
クロードがそう尋ねた後、しばし沈黙していたサヤはコーヒーを一口含んだ後
「…………この地にはあの娘達の本当の母親が眠っています……」
サヤのその言葉に、クロードは「テリュカ」のエルフの里が滅んだ事を思い出し下を向く。
「10年前……あの日……私は……必死で里に向かったけれど、誰一人救う事は出来なかった……」
「サヤ……!?それは……!?」
10年前のサヤの事情と、「テリュカ」のエルフの里が滅んだ話を聞いていたマグナスはサヤのせいではないと訴えるが、サヤはそれでも首を横に振る。
「あの時……私がちゃんとして力を振るえていたら……少しでも多くのエルフを救えたかもしれない……ラナとシアだって……彼女達を本当に救ったのは……あの娘達の本当の母親でした……」
サヤは当時の事を思い出して悲痛な表情を浮かべる。駆けつけても、血の匂いで吐きそうになってる自分。そんな中、スタンピードにあっても必死で魔物達から2人の子供を守ったラナとシアの母親。
サヤは時々考えてしまう。今の自分はあの母親と同じぐらい、ラナとシアの母親になれているのだろうか?と。けど、答えはいつまで経っても否だ。自分はまだまだあの母親のような母親にはなれない。だからこそ……
「私はあの娘達を守り抜きます。そして、あの娘達の本当の母親が眠るこの地で、あの娘達の母親に、あの娘達の成長を見てもらいたい。それが、私があの娘達の本当の母親に出来る唯一の事だから」
それは、サヤの後悔と贖罪と決意……そんな感情色々混ざり合った、サヤの心からの言葉だった。サヤの言葉にクロードとマグナスは言葉が出なくなってしまう。唯一、アリシアだけが呑気に未だにポテトを摘まんでいる。
「ですから、申し訳ありませんがクロード王子の申し出はお受け出来ません」
「…………あぁ、よく分かったよ。あんたが本当にあの娘達の母親だって事がな」
サヤが頭を下げてそう告げるのに、クロードは微苦笑を浮かべて返す。
『お母さん!!』
「ラナ!シア!」
ようやく目的地の喫茶店にたどり着いたラナとシアは、サヤを見つけて嬉しそうにサヤの方へ駆け寄って行った。
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