3.スタンピードクラッシャー

ゴブリンのスタンピードを対処した女性は、ゆっくりとコタロー達に近づいて行く。コタローは改めて見るその女性の顔に思わず見惚れてしまった。


(うわぁ……!?凄く綺麗な人だぁ……!?)


コタローは生まれてこの方こんな美人に会った事がないと断言出来るほど、目の前の女性は本当に美しかった。そんなコタローの心根を察したサリーはムッと膨れっ面になるが、コタローはそれに気づかないほどに目の前の女性に惹かれていた。


そして、その女性は数個のゴブリン達の魔石をコタロー達の前に置いた。


「悪いけど、ギルドへの報告をお願い出来るかしら?私はこれからやらなきゃいけない事があるの。それは、ギルドへの報告をお願いするあなた達への依頼料よ」


「えっ!?そんな!?でも!!?」


正直、新米冒険者のコタローに魔石の価値はよく分からないが、どう考えてもゴブリンの魔石とは言え、ギルドへ報告するだけでこの量が多過ぎるのはコタローにも分かっていた。


「悪いけど、さっきも言った通り私は忙しいの。その娘の足も治したし、この辺の魔物もあらかた片付けたから2人揃って無事に「テリュカ」のギルドまで行けるはずよ」


「えっ……!?あっ……本当に治ってる……!?」


サリーはスタンピードに向かっていくコタローへの心配や、その後に起きた女性の無双劇にコタロー同様に呆然としてしまい、足の治療をすっかり忘れていたのが、いつのまにか足の痛みはすっかり消え、腫れも完全にひいて、サリーは普通に二本足で立ち上がれるぐらいに回復していた。


が、更に女性は驚きの言葉を口にしていた。周りの魔物をあらかた片付けたと彼女は言っていたのだ。コタローが改めて周りを見回してみると……確かに、魔物の気配が無くなっている。最初はスタンピードが起きた事で、他の魔物も隠れているのかと思っていたのだが……


(この人は一体……?)


「それじゃあ!ギルドへの報告は任せたわ!」


「あっ!?ちょっと!?まっ……!?」


しかし、コタローの制止の言葉を聞かず、女性は物凄いスピードで走り去ってしまった。その姿を呆然と見送る事しか出来ないコタローとサリー。


「もしかして……あの人が……スタンピードクラッシャー……」


サリーの呟きに、コタローは驚くも納得している自分がいた。


スタンピードクラッシャー。それは、「テリュカ」の1人の冒険者に与えられた称号。その冒険者は未だにCランクなれど、数々起きたスタンピードを潰した事から、冒険者達の間でそう呼ばれるようになったと言う。


正直、超自然災害と呼ばれるスタンピードを潰せるはずがないと思っていたコタローは、この噂話は眉唾物だとあまり信じていなかったが


「本当にいたんだ……噂のスタンピードクラッシャーは……」


コタローはそう呟いて、女性が走り去って行く方向をずっとずっと眺めていた…………















そんな新米冒険者に強く刻まれた「スタンピードクラッシャー」と呼ばれている冒険者、サヤ・フィーリガルは現在……川の上をもうダッシュしていた。


「急がなきゃ……!?早くしないともうすぐ2人が帰る時間だわ……!?それに!今日はお野菜の特売日だし!?今日はあの娘達が絶賛してくれた野菜炒めにしましょう……!!」


愛する我が子を想いながら、今日もサヤは全力疾走で自分達がお世話になってる宿屋まで向かうのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます