45.アルテミスとエイーダ

エイーダは山のように渡された書類の整理をしていた。正直、エイーダはこの仕事だけが苦で仕方ない。いっそのこと、仕事を放り出して城下町に出かけようかと考えるエイーダ。と、そんな時何者かの気配を感じチラッとそちらを見る。


「相変わらずクソ真面目なぐらいに時間通りじゃの。ドライアドの長よ」


「あなたが不真面目過ぎるだけですよ。「テリュカ」の竜人王」


お互いに軽口を叩いて挨拶するエイーダとアルテミス。2人はもう随分と長い付き合いだ。これぐらいはいつもなので2人とも軽く流してしまう。


「で、単刀直入に聞くが……お前さんはサヤの娘達に会ったんじゃよな?どうだった?」


「どう……とはどういう意味でしょうか?」


「分かっとるくせにいちいち聞くな」


エイーダは軽く溜息をついてそう言った。そんなエイーダを見てアルテミスは微笑を浮かべ


「そうですね。あなたの察してる通りと言っておきましょうか」


「やはりか……」


アルテミスの言葉を受けエイーダは重たい溜息をつく。


「やはり……という事は心当たりがあるという事ですか」


「当たり前じゃ。エルフの里は滅びたというのに、「テリュカ」の周辺に発生する「迷宮」は低ランクばかり。おまけに、先の件でラナとシアが「テリュカ」から離れたら、「テリュカ」に3つもスタンピードが起きたわ」


エイーダは軽く溜息をつきながらそう話す。そのエイーダの言葉を聞いたアルテミスは真剣な瞳でエイーダを見つめる。


「それで、あなたはこの国の王としてあの2人を城で厳重に保護いたしますか?」


「まぁ、本来ならそうすべきところなんじゃが……サヤを敵に回しとうないわ……」


「まぁ、そうですね……」


エイーダの言葉にアルテミスは苦笑を浮かべる。


「ちなみに我々ドライアドは全面的にサヤの味方ですから」


「人間嫌いのドライアドの発言とは思えんの……」


「別に人間嫌いという訳ではないんですがね」


エイーダの言葉に再び苦笑するアルテミス。が、すぐに真剣な瞳でエイーダを見る。


「それで、あの2人に自分達の力の事を話すんですか?」


「まだあの2人に自分達の力について話すのはやめた方がよいじゃろう。余計な混乱と負担をかけるだけじゃ。まぁ、サヤには話さなければならんじゃろうが……」


その時の事を考えると、急に胃が痛くなる想いがして、顔をしかめてしまうエイーダ。やはり、ここは仕事をサボって気分転換が必要だ。なので、エイーダはさっさと城下町へと向かう準備を始める。


「サヤに言うなら早くした方がよいですよ」


アルテミスはニッコリ笑ってそう言った後、すぐにその場から姿を消す。


「分かっとるわい……そんな事は……」


エイーダはそうぼやきながら、この重たい気分を晴らすべく城下町へと向かって行った。


もちろん、この後すぐに仕事をサボったのがクリステアにバレてこってりと説教を受けたのは言うまでもないだろう……

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