3.「美の勇者」達の誘惑

  一方、ラナとシアはサヤから連絡を受け、サヤがいつも行く喫茶店に行く為に一旦合流する事にし、2人は連絡を取り合ってラナは集合場所に指定した噴水でシアが来るのを待っていた。


「シア……何……その食べ物の数……」


シアは両手いっぱい大量の食べ物を抱えながらやって来た。しかも、口の中にも食べ物が残っているのか頬がモゴモゴ動いていた。


「んぐんぐ……」


「うん……とりあえず口の中にある物飲み込んでから喋ってくれていいから……」


ラナに言われシアは口の中にある物をしっかり咀嚼して飲み込んだ後


「商店の人達がいっぱいおまけしてくれた」


シアのその言葉に、ラナは額に手をあてて溜息をついた。この「テリュカ」の人達はラナやシアが可愛いというのもあるが、2人を我が子のように可愛がっている所がある。恐らくだが、ヨダレを垂らしてジッと食べ物を見ているシアを見て、おまけと言って渡した人が多かったのだろう。現に、ラナがシアの財布を確認したが、財布の中身はほとんど減っていなかった。


「はぁ〜……本当にここの人達はシアに甘いんだから……」


「ラナにはおまけはくれなかったの?」


「……なかった訳じゃないけど、流石におまけを貰う訳にはいかないからねぇ〜」


ラナが主に遊んでいたのは金魚すくいであった為、金魚をおまけに渡されても飼育をしっかり出来るか分からない為ラナは断り、すくった金魚も水槽に戻したのである。


「とりあえず、お母さんから連絡貰った喫茶店に行こうか」


「ん、そうだね」


とりあえず2人は合流出来たので早速サヤから連絡をもらった喫茶店に向かおうと移動をし始めたのだが




「そこの可愛らしいお嬢さん達。ちょっといいかな?」


2人にそう声をかけてきたのは、キラキラという効果音がつきそうなイケメンの集団だった。最初に声をかけた中心にいた男性が気障ったらしく髪をかきあげた。それだけで、周りにいた女性達から黄色の歓声があがる。

  この中心にいた男性こそ、「マリステル」の第一王子ユーリ王子が雇った「美の勇者」と呼ばれるエリックだった。エリックは自身もそうだが、パーティーメンバーも見目麗しい者を集め、魔物すら誘惑・魅了し「迷宮」を攻略している有名なパーティーだ。

  そんなエリックがユーリ王子に依頼されたのは、ラナとシアを誘惑・魅了して「マリステル」に連れて来るようにする事だった。正直、エリックにとっては簡単すぎてつまらない依頼だったが、今後自分達の活動をユーリ王子が支援してくれるというのでエリックはこの簡単すぎる依頼を引き受けたのである。


(相手は子供で見目麗しいとされるエルフ種とはいえ、私にかかればこんな子供2人を魅了するぐらい楽勝さ!!)


何度かエルフ種の女性を自分の虜にさせたエリックには絶対の自信があった。故に、エリックはいつものように2人に声をかけた。


「どうです?良かったら私達と一緒にお茶でもいかがですか?」


本当にキラキラとした効果音がつきそうなセリフで、2人を魅了する為にいつもの口説き文句を放ったのだが



「すみません。今急いでるので」


ラナはキッパリと頭を下げて断ったのだった。


  

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