41.グラニフの判決はこれで終わった訳ではない

エイーダの判決に傍聴席から大量の不満が漏れ始める。それもそのはずだ。グラニフの冒険者証を剥奪せずに国外追放などしても、またどこかの国で同じように暮らすだけなのは目に見えて分かっている。現に、グラニフはニヤニヤ顔を抑えていない。


(くくく……!散々脅してくれたが、結局Bランクの俺を裁く事は出来ないって訳か。ここはひとつ、王都「マリステル」で勇者称号でも手に入れて返り咲いてやるぜ……!)


グラニフは今後のプランをすでに考え始めていた。


が、当然ながらグラニフの判決はこれで終わりではなかった。


「尚、グラニフの金銭・武具・道具・金目になる財産は全て没収の上、国外追放とす」


「は!?」


エイーダのその言葉に驚き固まるグラニフ。しかし、固まってる場合でない事に気づき、すぐにエイーダに言い募る。


「ちょっと待て!?金目の物全て没収の上追放って!?何でそうなるんだよ!!?」


「クリステア。アレを奴にくれてやれ」


「はい」


エイーダに言われ、クリステアはしばらく退席した後、数分後持ってきたのは大量の書類の束だった。


「これが何だって言うんだよ!!?」


「これは、あなたがこの国で散々やってきた事への請求書ですよ」


「んなぁ!!?」


突きつけられた請求書を見て驚愕するグラニフ。その金額は膨れ上がって貴族街に城が建てられる金額だった。


「ふむふむ……無銭飲食に……椅子や机を酔って壊した弁償代……しかも、この束でようやく半分なのが恐ろしいのぉ〜……」


「まっ……待ってくれ……!?Bランク以上の冒険者にはある程度融通するシステムが……」


「あるのぉ〜……確かにそんな面倒なシステムが……しかし、あくまである程度じゃし、罪を犯した愚か者に融通してやる必要はないじゃろ」


エイーダにキッパリとそう言われて押し黙るグラニフ。


「まぁ、もうすでにこの裁判が始まる前から財産は全て没収済みじゃがな。正直、没収したのでも全然足りないがないよりはマシじゃろ」


「ちょっ!?ちょっと待て!!?いくらなんでもこの判決は横暴過ぎるだろう!!?」


グラニフはこの判決に異議を申し立てる。が、エイーダはチラッとサヤを見て


「横暴と言うが、お前さんが散々バカにしたサヤは、今のお前さんと同じく武具や道具を取り上げられてパーティーを追放されたが、今や2人の娘を立派に育てておる親バカ冒険者になっておるぞ」


親バカという言葉に若干片眉を上げたサヤだが、自分でも多少の自覚があるというか、ラナとシアがこんなに可愛ければ親バカになっても仕方ないと思ってるので黙っている。


確かに、サヤはグラニフと同じく武具や道具を取り上げられてパーティーを追放された。違うのは持っていた金銭だけは取り上げられなかった事だが、あの時、持っていたお金はギリアスが壊した物の弁償代に充てていたので、ほぼ無一文に近かった。


「ぐっ……!?だが……!?あいつは剣を持っていたぞ……!?」


「それは、奴が師から渡された物だと聞いておる」


確かに、今も大事に使ってる剣はマグナスから渡された物だ。決して、買ったりまして盗んだりして手に入れた物ではない。


「まぁ、もしかしたらお前さんの為に武具を渡す者がいるかもしれんぞ。その武具だったら目を瞑ってやってもよいぞ。まぁ、いればの話じゃがな……」


さっきの傍聴席の反応を見る限り、そんな事をしてくれる人物は1人もいない。グラニフの顔が真っ青に染まっていく。

武具もなく、道具もない状態で国から追い出され、別の国へと移動するのははっきり言って自殺行為だ。国から一歩出れば魔物が徘徊しており、それらを倒す武具がないのだ。ある程度弱い魔物なら素手でも倒せなくもないが、これで高ランク魔物やスタンピードが来たら確実に生き残れない。まして、グラニフは「重戦士」であるから魔法は使用出来ない。


グラニフは最後まで抵抗し続けたが、エイーダに命令された騎士達の手によって強制的に国から追放されたのだった……


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