6.荒れる交渉
一方、サヤ達はサヤの案内で連れて来られた喫茶店は、落ち着いた雰囲気のある居心地がいい場所だった。人気が少なく、会話が聞こえにくい端の方の席を選んだ3人はそこに座った。クロードの隣にマグナスが座り、その2人に対面する席にサヤが座った。
(それにしても……まぁ……薄らぼんやりな記憶しかないが……10年でこんなにも変わるもんかねぇ〜……)
クロードはマグナス経由で2、3度程サヤを見かけた事があるが、その時見た感じは、確かに顔立ちは整っていたような気がするが、10年で誰もが一度は振り向くような美女に変貌しているのだから驚きである。
(正直、俺が今まで見てきた女の中で1番美人かもしれん……)
クロードは遊びたい盛りにそれなりに多数の女性達と遊んできたし、貴族子女や、アリシアのような女性冒険者達とも多数交流しているが、その女性達の中で1番美人だとクロードは目の前のサヤを改めて見てそう思った。
(さて……出来ればこっちの話をする為にも、まずはマグナスから話を切り出してもらいたいんだが……)
が、そのクロードの頼みの綱であるマグナスは言葉を発せずにいた。久しぶりに会い、美しくなった愛弟子を前にどう接したらいいのか分からなくなっていた。
クロードは軽く溜息をつき、ここは自分から話を切り出すしかないとサヤに話しかけようとしたら
「先に言っておきます。私は大切な可愛い私の娘達を貴方達に渡すつもりはありません」
サヤはクロードを真っ直ぐ睨みそう言ってきた。いきなり核心的な話題を出されて動揺するクロードだったが、クロードよりも動揺を露わにしたのは隣に座っていたマグナスだった。
「なっ!?クロード!サヤの娘達を渡すとはどういう事だ!!?」
マグナスは立ち上がってクロードを睨みつける。それに更に慌てはじめるクロード。
「その様子だと先生は「マリステル」が私の娘達にした事をご存知ではないみたいですね」
「あっ!?当たり前だ!?俺は……その……単純にサヤがちゃんと元気で暮らしているか確かめたかったというだけで……」
マグナスは最後の方で若干俯いて小声になってそう訴えた。そんな親友にクロードは若干を溜息をつきつつも、クロードは2人の説得にとりかかる。
「とりあえずマグナスは落ち着いてくれ!前にも言ったが、俺は確かに「マリステル」の第三王子ではあるが、国のやり方には反対しているんだ。「マリステル」にいい印象がないのは分かってるが、どうか俺を信じてはもらえないだろうか?」
クロードはいつになく真剣な眼差しでサヤにそう訴えかける。サヤはしばし沈黙した後溜息をつき
「……分かりました。先生のご友人ですからね。悪い人ではないのはなんとなく理解しました。ただ……」
「ただ?」
「この方も交渉人だとすれば完全な人選ミスですね」
サヤがそう答えると、突然風が巻き起こり、いきなりサヤの横から剣が振り下ろされる。が、サヤは特に慌てた様子もなくその剣を片手だけで受け止めた。
「ほう……流石はマグナスの弟子か……私の不意打ちを受け止めるとはなかなか……」
サヤに剣を振り下ろしてきたのは、「烈風の勇者」アリシアだった。
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