10.これって正当防衛よね?
怒りの表情でサヤに詰め寄るグラニフだが、サヤはまるで気にした様子もなく、コロナが換金作業をしてくれるのを待つ。
「おかしいじゃねえか!?お前みたいなゴミ屑の役立たずがオーガの大半を倒しただと!?絶対に鑑定システムをおかしくしたに違いない!!そうだろう!!?」
グラニフはそう言って詰め寄ってくるが、サヤはやはりグラニフの方を見ようとせず
「あなたの言う通り、私のようなゴミ屑の役立たずが冒険者ギルドの鑑定システムを弄れると思うの?」
「ぐっ!!?」
サヤの反論に何も言えなくなるグラニフ。
冒険者ギルドは何人もの冒険者達が、たむろしてる場所だ。グラニフの言う通りサヤがゴミ屑の役立たずな冒険者だと言うなら、何が仕出かそうとする前に捕まってしまうだろう。
「それだけじゃねえ!その赤ん坊!エルフだろ!まさか!あのエルフの里混乱時で掻っ攫ってきた子じゃねえだろうな!!」
この言葉に、サヤはついにグラニフを睨みつける。その睨みの迫力に、グラニフは押し黙ってしまう。
「この子達は私の娘よ。何か文句あるの?」
その言葉に、この場にいる全員驚く。が、コロナはその赤ん坊がエルフだからこそ聞かなくてはいけない事があった。
「あの……その……その赤ん坊は純血のエルフですよね?それなのに、娘というのはどういう事なんでしょうか?」
サヤは間違いなく人間だ。例え父親がエルフだったとしても、その子達はハーフエルフでないとおかしい。まぁ、そんな様子も無かったサヤが急に双子の赤ん坊の母親になる時点でおかしいのだが……
そこで、サヤはようやくコロナがハーフエルフだと気づき、若干目を伏せて
「エルフの里の方面で煙が上がっていて、急いで駆けつけたけど、もうエルフの里はスタンピードの被害を受けた後だった」
「そうか。里の消火活動をしたのはお前だったのか」
ダンクの言葉に、サヤは黙って頷く。ダンクが駆けつけた時は、サヤが飛び去って行った後だったのだ。
「それで、私は必死で生き残ってる人を探したけれど、結局、まだ息があった人を救い出したけどダメだった。それで、この子達の本当の母親エルフに、この子達を託されたの。だから、この子達は私の娘なの」
サヤの説明を受けてようやくコロナは納得した。と、同時にサヤがここまで変わった理由も理解した。人は守るものが出来ると強くなる。そういう人をコロナは何度も見続けてきたから……
「これで、説明は全部終わったわ。早く換金してもらえないかしら?」
そう言われて、コロナはようやく自分が任されていた仕事を思い出して換金作業に入ろうとするが
「待てやぁ〜!!!ゴラァ〜!!?」
怒り心頭といった様子のグラニフがサヤを睨みつける。
「お前みたいなゴミ屑の役立たずにここまでバカにされて黙ってられるか!お前ら!やっちまえ!!」
『へいッ!!』
グラニフの部下達が立ち上がり、サヤに立ち向かう態勢になる。ダンクとコロナが慌てて止めに入ろうとするが
「ねぇ、これって正当防衛よね?」
「えっ?」
サヤがコロナにそう言った瞬間、グラニフを含めグラニフの部下達が、まるで重い物がのしかかったような感覚が起きて、動きが鈍くなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます