7.アロマとディアスとサヤ

マイホームの必要な物話にあれだけ夢中になっていた2人だったが、気づけばウトウトとし始め、サヤが寝るように促すと、2人はコクリと頷いて、やはりそこは双子なのか、同じタイミングで寝はじめた。

そんな可愛い可愛い目に入れても痛くない2人の頭を優しく撫でながら、その寝顔を優しい微笑みで見つめるサヤ。


すると、そんなサヤ達の部屋に2人の人物が訪れた。アロマとディアスである。


「あら?さっきまであんなにはしゃいでたのにもう寝ちゃったのね」


「はい。きっとはしゃぎ疲れて眠ったんだと思います」


「そう。うふふ♡当然だけど10年前より大きくなっけど、この寝顔だけは10年前と変わらないわね♡」


アロマはラナとシアの寝顔を見てそう言った。それにはサヤも同意である。


サヤがアロマとディアスと出会ったのは、ちょうど10年前、サヤが彼女達の母親になる決意をしたあの日からの付き合いになる。

最初は、冒険者ギルドの受付をしているコロナからの紹介だった。オムツやミルクを買いに行く途中で呼び止められ、自分の母親がエルフであり、自分の母親でもあるから、頼ってみたらいいと言われ、サヤは素直にその言葉に従いここに向かったのだ。


「最初来た時は本当にビックリしたわ。15歳の女の子が、エルフの双子の赤ん坊抱えて、「私はこの娘達の母親になるから、母親として色々教えてください」って、頭を下げるんだもの」


「まぁ、でもその後もその後で驚きだったがな。乳飲み子を背に抱えながら冒険者活動するし……そんな冒険者未だかつて聞いた事ないぜ」


アロマとディアスはその当時を振り返って朗らかに笑う。


「だって仕方ないじゃないですか。まだ乳飲み子は何を仕出かすか分からないから、片時も目を離してはいけない。と、アロマさんが言ってましたし、「初めての育児入門」にも書いてありましたし」


「だからってお前なぁ〜……」


ディアスは呆れたように溜息をつく。これでも、ディアスは元冒険者だった。妻アロマともその辺りがきっかけで知り合ったのだが、自分は乳飲み子抱えて冒険者活動した事はないが、それが難しい事ぐらいはよく分かっている。しかし、結果として、娘達もサヤも無傷なのでなんとも言えない。


「けれど……この寝顔を見るのも今日で最後なのね。なんだか寂しいわね……」


サヤはすでにアロマ達にマイホーム購入の件と、もう目標金額に達成した事は伝えてある。故に、2人は最後に2人の寝顔を見に来た訳だ。


「活動内容によっては、2人をアロマさん達に預ける事もありますし、これからも頼りにさせてもらいますよ」


「あら?私はいつでも頼ってくれていいのよ。なんだったら宿代だってタダでもいいんだから♡」


「流石にそこまで甘える訳にはいきませんよ」


アロマの言葉にサヤは苦笑いを浮かべてそう答えた。


父親に捨てられ、勇者パーティーからも追放され、エルフの里のエルフを誰1人救えず、絶望の淵にいたサヤだったが、2つの希望を手に、母親になり、今こんな暖かな人達と付き合えているのは、間違いなくこの2人の娘のおかげだ。


サヤはもう一度優しく愛しの我が娘達の頭を撫でた、

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る