39.里親制度

グラニフの言い分に呆れ果てて溜息をついてしまうエイーダ。しかし、今は自分がこの裁判を取り仕切ってる為、自分が進行していかなくてはいけない。若干面倒に思いつつも話を進めていく。


「正直どころかツッコんでいいのか分からんが、お主とて里親制度は知っておろう」


エイーダの言葉にグラニフは押し黙る。

里親制度は全国共通に存在する制度で、魔物被害で親を亡くす子供が多く、そんな子供達を引き取ってもらえるようにと始めたのが里親制度である。


「確かにあるが!里親になって引き取れるのは18歳になってからだろう!こいつが2人を引き取った年齢は15歳だ!あの2人の里親になれてないはずだろう!!」


グラニフの若干あの時の悔しさを思い出しつつもそう反論した。確かに、里親として子供を引き取れるのは成人年齢である18以上になってからだ。2人を引き取った時のサヤの年齢は15歳なのでグラニフの言い分も正しくはあるが……


「別に、15歳で2人を引き取っていたとしても、18歳になって里親としてちゃんと2人を引き取る手続きをしていたら問題はなかろう。まぁ、最も……サヤが15歳から18歳になるまでの間はアロマとディアスが里親になっておったがの」


そう。サヤが2人を引き取り2人を育てる事をアロマとディアスに進言したあの時、アロマは自分が2人の里親になると言ったのだ。しかし、サヤはそれにもう反発し、自分が2人の母親になると言って聞かなかった。だからアロマは……


「どのみちまだ15歳のあなたでは2人の里親の母親として法律で認められないわ。だから、3年。3年間あなたをテストさせてもらうわ。私達は仮としてこの子達の里親になる。けど、2人を育てるのはあなたよ。3年間、2人をしっかり育てて、この子達の母親としてあなたが相応しいと私が判断したら、あなたにこの子達の里親の権利を譲渡するわ。けど、もし相応しくないと判断させてもらったら……2人は私がそのまま引き取るわ。いいわね?」


サヤはあの時のいつもの穏やかなアロマの瞳とは違う、真剣な母親としての瞳での問いかけを今でも覚えている。これが、本当の母親なんだとサヤが実感した瞬間だった。

故に、サヤはアロマを手本としてながら、2人の母親として懸命に3年間2人を育てた。時に、恥を忍んでアロマに尋ねながらも、必死で2人を育て続けた結果、サヤが18歳になったその日に、アロマから2人の里親をサヤに譲渡すると書かれた書類を渡された時は、サヤは思わず涙をボロボロと溢してしまった。


本当にそう考えると、サヤはアロマには本当に頭が上がらないなと思い、アロマを見るが、見られたアロマはいつものように穏やかな笑みを浮かべた。


「ま……!?待て……!!?里親として認められていても仮のはずだろう!?10年経たなきゃ本当の里親として認められないはずだ!!?」


ここまでの話をされて尚も見苦しい言い訳を述べるグラニフに、傍聴席からいくつもの呆れた溜息が漏れる。裁判長を兼任しているエイーダからも大きな溜息が漏れる。


「例え仮の里親であろうと、国として認可してる仮里親の子を攫うのも立派な犯罪じゃろ。それに、サヤとあの子らはすでに本契約の里親として認可されとるわい」


「なっ!?そんなはずないだろう!?本契約の里親として認められるには、10年の観察結果が必要なはずだろう!!?」


先程のエイーダの言葉は無視し、サヤが本契約で2人の里親として認められている事に噛みつくグラニフ。

確かに、グラニフの言う通り本契約の里親として認められるには10年の期間がいる。これは、里親として引き取るのはいいが、その子を奴隷のように扱い虐待する人が多くいた為、そのような措置がとられたのだ。もしも、観察期間内にそのような事をすれば、すぐにでもその人から子を取り上げる為に。アロマがサヤに簡単に里親を譲渡出来たのも、この仮里親であった為である。

この事実はサヤも知らなかったらしく、目を見開いて驚いていた。そういえば、なんか書類がいくつも沢山あるなとは思っていたが、アロマにようやく2人の母親として認められたのが嬉しくて、あまりしっかりと書類の内容を確認していなかった。


「サヤが18歳になったあの日、アロマが2人の里親をサヤに譲渡したい旨と、サヤを特別に本契約の里親として認めてやってほしいという嘆願書付きで役所にやって来たのじゃよ。しかも、嘆願書にはこの国に住まう大半の者のサインがあったしの」


エイーダが嘆願書の書かれたサインを何人か読み上げる。その名前を聞いてサヤは驚く。それは、普段から買い物でお世話になっている商店街の人々。鍛治で世話になってるドワーフ。ダンクパーティーの面々などだった。まさか、そんなにも沢山の人が自分を2人の母親として認めてくれているとは思わず、ただ驚く事しか出来ないサヤ。


「当然よ。だって、サヤちゃんが一番頑張ってたじゃない」


アロマにそう言われ、サヤは15歳から始めた子育ての日々を思い出す……



初めてやったオムツ替えやミルクを与えるのに右往左往しながら、本やアロマに聞いた通りに行った。


ちょっとした事でもすぐに泣いてしまい、その度にあたふたと泣いてる原因を自分なりに考えて行動した。


突然、夜泣き出して困り果てたものの、こんな夜中にアロマを訪ねる訳にもいかず、サヤは2人を背負ってあやしながら散歩し、3人で綺麗な星空を眺めた。



大変だった事はいっぱいあった。いや、むしろ始めは大変の連続だった。けど、それ以上にラナとシアと一緒にいられる時間が、サヤにとってはかけがえのない大切な時間になっていた。故に、アロマに認められた時は思わず泣いてしまったのだ。あの日々を過ごした自分は間違っていなかったと認められた気がして……



今、この瞬間もふと泣きそうになってしまうが、サヤはそれをグッと堪える。何故なら、もう自分はアロマだけでなく、他の人々にもラナとシアの立派な母親と認めてもらったのだから……



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