12.身勝手な父親
ゴロに話があると言われたサヤは、別に話など今更したくはなかったが、ついて来られても厄介なので一応聞くだけ聞く事にした。なので、手近な人気のない喫茶店を見つけてそこに入る2人。
もうサヤもここで暮らして10年になるので行きつけの店の1つや2つはあったが、こいつの事で迷惑をかけたくないと、こいつといるのをあまり知られたくなくてそこへ行くのは避けた。2人は適当な席に座る。
「で、話って何?」
サヤは若干睨みつけるようにそう言った。そのサヤの態度にゴロはイラっとしたものの、すぐに下卑た笑みを浮かべ
「また一緒に暮らそうと思ってな。親娘なんだ。一緒に暮らすなんて当然だろ?」
などと正気を疑うような発言が飛び出してきたので、サヤは怒りの感情よりも呆れの感情が強くなってしまった。
ギリアスから散々お前は父親に売り飛ばされたと言われてきた。それを言われ、サヤは信じられないという気持ちは一切なく、まぁ、そうだろうな……という気持ちしか湧いてこなかった。故に、サヤの答えは決まっている。
「お断りよ」
「んなぁ!?」
アッサリと断わられゴロは怒りで顔を真っ赤にする。恐らく、断わられるとは思ってなかったのだろう。サヤからしたら絶対に断わらないと思う方が不思議な話であるのだが……
「毎日毎日奴隷のように働かされて、暴力を振るわれたりもして、挙げ句の果てには身売りのように私をあの勇者に売り飛ばしておいて、今更あなたと暮らしたいなんて思う訳ないでしょ」
サヤは至極真っ当な正論を述べた。が、肝心のゴロは
「貴様!!俺に刃向かいやがって!!俺はお前の父親だぞ!!」
と、正直サヤからしたら訳が分からない言葉を述べられ、サヤは呆れた溜息をつく事しか出来なかった。
「だから何?私はもうあなたを父親だなんて思ってないわよ」
サヤはアッサリとそう言った。それに激怒したゴロは昔のようにサヤを殴る為に拳を振り上げた。
しかし、サヤはその拳を避ける事もガードする事すらせず……堂々とそのゴロの拳を受け止めた。
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