5.サヤの変わらない部分

サヤは愛する我が娘2人をギュッと抱きしめる。2人もくすっぐたそうにしながらも、大好きなお母さんの抱擁を受け入れる。


「お母さん!ただいま!」


サヤに改めて元気よく挨拶したのはラナ。プラチナブロンドの長い髪。性格は明るく社交的。正直、2人がどちらが先に産まれたか分からないが、ラナは自分がお姉さんだと主張し、度々シアにお姉さん風をふかせていたりする。そんなところが凄く可愛いとサヤは思っている。


「お母さん。ただいま」


ワンテンポ遅れて挨拶を返したのはシア。ラナと同じくプラチナブロンドの長い髪で、顔立ちも双子故に似ているが、シアは若干いつも眠たげな目をしている。性格は天然というか、何を考えてるのか分からないような感じである。が、そんなミステリアスな魅力が可愛いとサヤは思っている。


総じて言うなら、サヤは自分の娘達が世界で一番可愛いと思っている。エルフ特有の見目麗しさを差っ引いたとしても、うちの娘ヤバいぐらいにマジ天使とサヤは常日頃から思い続けている。


しかし、そんな可愛い可愛い娘達も、いつか自分の元を離れて、好きな男を見つけて、その男の元に嫁いでしまうんだろうなぁ〜……という考えがサヤの頭によぎる。


「お母さん!今までお世話になりました!」


「これから私達はこの人の元に嫁いでいきます」



「そういう訳だ!!お前の娘達は俺のものだ!!」


何故だろうか……そういう嫌な事を考える時に限って、2人を娶っていく男の顔が、あのクソ勇者の顔で浮かんでしまうのは…………



「おえぇぇぇぇ〜ーーーーーー!!?」


「お母さん!?大丈夫!?」


「しっかりして!?お母さん!?」


突然、吐き気をもよおしてしまうサヤを見て、慌ててラナとシアの2人が優しくサヤの背中をさすってくれた。2人の優しさにサヤの吐き気はすぐに回復した。


「ごめんなさい。あなた達がお嫁に行くのを想像したら吐き気がしてしまったわ」


サヤは素直に2人にそう告白した。サヤは血を見て吐き気がするのは無くなったが、こういうところは変わっていなかった。


「もう!お母さんったら!そんな想像しなくても大丈夫だよ!私達はいつでもお母さんと一緒だよ!」


「うん。私達はお母さん大好きだから」


「あなた達……!?」


思わず感動して2人を抱きしめてしまいたい衝動をグッと堪えるサヤ。すぐ近くで「いつまでやってんだ」という目で見てるディアスの視線に気づき、いつまでも娘達と戯れてばかりもいられないと判断したからである。早く2人に美味しいご飯を食べさせてあげる使命をまっとうしなければいけない。


「それじゃあ、私はこれからお夕飯の支度をするわね」


「あっ、お母さん!私手伝うよ!」


ラナが挙手をしてそう言う。


「分かったわ。それじゃあ、ラナは野菜を洗って、その野菜を切ってもらえる?」


「は〜い!」


ラナはすでに10歳にしてサヤに並ぶほどの料理の腕前だ。包丁の扱いも手慣れたものである。サヤが料理入門書を買うのは、まだ娘に料理で負ける訳にはいかない一心があるかもしれない。


「お母さん。私も手伝う」


『シアはお皿並べてテーブルを拭いておいてね』


「……はい」


ラナとは反対で、シアは料理だけが苦手だった。他の家事は普通に出来るのだが、料理だけは本当にダメだった。娘の手料理だと喜んで食べたサヤが、生まれて初めて料理で臨死体験をするというぐらいダメだった。


これが、サヤと愛する娘達との日常である。

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