1章:逆恨みの冒険者

1.スタンピードに襲われる新米冒険者

サヤがエルフの双子の母になるのを決意してから10年後…………



ここは、「テリュカ」から離れたとある荒野。ここで、とある新米冒険者パーティーが無事に一つの依頼をこなしていた。


「おっしゃあ!やったぜ!また勇者に一歩近づいてきたぜ!」


新米冒険者パーティーがかなり苦戦を強いられる魔物バジリスクを撃退し、意気揚々とそう宣言するのは、このパーティーのリーダーのスバル・ディルカ。年齢は15歳である。職業は魔剣士だ。


「流石!スバル!カッコいい!!」


そんなスバルの腕に抱きついてきたのは、同じくこのパーティーの魔導師であるエリナ・キャンシー。こちらも同じく15歳である。


そんな2人……というか、エリナの方を羨ましそうに見つめているのは、このパーティーの治癒術師のサリー・クラニエルだ。同じく年齢は15歳。エリナとサリーはスバルを巡ってライバル関係にあるが、サリーは若干気の弱い性格の為、エリナよりも一歩も二歩も遅れていた。


そんなパーティーの関係を苦笑しながら見ているのは、同じくこのパーティーの戦士であるコタロー・フウガである。こちらも同じく年齢は15歳。

このパーティーはたまたま冒険者登録する時に一緒になり、年齢も同じですぐに意気投合した為に、パーティーを組むことにしたのだ。


で、パーティーを組めば、イケメンで実力もあるスバルはモテた。コタローはそんなスバルを羨ましそうに見つめる事なく、ただ、「やっぱスバルは凄いなぁ〜」としか思わなかった。


しかし、そんな新米冒険者達に突然の試練が訪れる……


ドドドドドドド…………!!!!!!


突然地鳴りのような音が遠くから聞こえ、パーティーメンバーはそちらを振り向くと、無数のゴブリンの群れがスバル達に迫って来ていた。


「なっ!?アレは……!?スタンピードか……!?みんな!逃げるぞ!!」


スバルの撤退宣言を受け、パーティーメンバーはそれに従う。いくら、新米冒険者でも簡単に倒せるゴブリンとは言え、アレはスタンピードだ。数が多いだけでも厄介な上に、群れには上位種のゴブリンか、ユニークモンスターなどが混じってる可能性がある。故に、スバルの撤退指示は正しい判断だ。


だが、ここで新米冒険者達に更なる試練が起こる。


「あっ……!?」


元々運動神経があまり良くないサリーは、足をもつれさせ転んでしまったのだ。


「ッ!?大丈夫!?サリー!?」


「大丈夫だけど……足が……」


サリーはなんと転んだ拍子に足を捻ってしまったようである。彼女は治癒術師ではある。故に、自分の足の怪我が自分の治癒術では回復まで時間がかかるのが分かっているので、絶望で顔が真っ青になっている。おまけに、回復薬は先程のバジリスク戦で使い果たしてしまった。


「コタロー!サリーはもうダメだ!置いて行くぞ!」


「そんな!?待ってよ!?サリーは僕達の仲間だろう!!?」


「今超自然災害級のスタンピードが起きてるんだ!これは当然の判断なんだよ!」


確かに、スタンピードに遭遇した場合、そういう判断をしてもやむなしというのは、冒険者の間では暗黙のルールにはなっている。


「ッ!?でも!僕は!仲間を見捨てる訳にはいかない!!」


「だったら勝手にしろ!!」


そう言ってスバルはコタローとサリーを置いて逃走をする。エリナもチラチラと2人を気にしながらも、スバルの後を追う。


「サリー!僕の背に!!」


「けど!?そんな事をしたらコタロー君の走るスピードが!!?」


「いいから!早く!!」


コタローの剣幕におされ、おずおずとサリーはコタローの背におぶさるようにつかまる。そして、サリーはコタローに……


「ありがとう……コタロー君……」


「仲間なんだから当然だろ!」


コタローはサリーを背負って懸命に走る。しかし、やはり人1人背負って走る状態では、いつも以上に遅くなり、スタンピードとの距離が徐々に縮まってしまっていき、それに焦りを覚えてしまった為……


「うわあぁ!?」


「きゃあぁ!?」


コタローも足をもつれさせて転んでしまう。幸い、コタローは頑丈だったのもあり怪我は負ってないが、スタンピードはもう目前に迫ってきていた。


「もういいよ!?コタロー君!コタロー君だけでも逃げて!?」


「そんな訳にもいくかよッ!!サリー!なんとか時間を稼ぐから、その間に足を治療して、君だけでも先に逃げるんだ!!」


「そんな!?待って!?コタロー君!!?」


もう逃げるのが不可能だと判断したコタローは少しでもサリー治癒時間を稼ぐ為に剣を構えて飛び出した。


が、その時だった……


「ゴブリンのスタンピードか……実入りは少なそうだけど、ないよりはマシよね」


そう言って、コタローの眼前に黒い長い髪をなびかせた美しい女性が文字通り舞い降りた。あまりの出来事に呆然と立ち尽くすコタロー。


「さて、今日も可愛い可愛い娘達の為に稼ぎますか……」


そう言って彼女は持っていた剣を構えてゴブリンのスタンピードに突撃した。

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