2.マグナスが出来る事
サヤは酒場を出て数分歩いたところで
「待て!?サヤ!」
マグナスに呼び止められ、サヤはすぐにマグナスを方を振り向く。
「先生……って、もうパーティーを抜けたんですから、先生呼びは良くないですよね……」
「構わない。パーティーから追放されたとはいえ俺とお前の縁が無くなった訳じゃない」
マグナスは笑みを浮かべてそう言った。サヤも思わずつられて笑みを浮かべる。すると、マグナスは一本の剣をサヤに渡す。
「これは、俺が昔使っていた剣だ。古い剣だが毎日手入れはしているから使えるはずだ。持っていけ」
マグナスはそう言ってサヤに自分の剣を渡そうとするので、サヤは戸惑いの表情を浮かべる。
「しかし……これは……先生の……パーティーの装備品で……」
「これは昔俺が自分の稼いだ金で買った物だ。それを俺が誰に渡そうが自由だ。ギリアスに文句は言わせないさ」
マグナスはニッと笑ってそう言った。ここまで言われた以上、マグナスの好意を無碍に断るのは失礼になると思い、サヤはありがたく剣を受け取る事にした。
「ありがとうこざいます……先生……」
「いいや。むしろ俺の方こそすまない。こんな事しか出来なくて……俺はお前の師匠なのに、弟子を守るどころか、こんな形にさせてしまって……」
サヤは魔剣士として、マグナスに剣の稽古をつけてもらっていた。マグナスもパーティーの為にとサヤを厳しく稽古し、サヤの剣の腕はマグナスも目を見開く程成長しているのだが、いかんせん。彼女のアレが、彼女の腕を披露する機会を無くしてしまっていた。
故に、マグナスは今回の件が残念でならない。出来るなら、サヤにはあのデメリットを克服させ、立派な魔剣士として、パーティーの最重要戦力になってもらいたかった。
それに、マグナス個人としてもサヤに惹かれているものがあった。マグナスも18の青年だ。そういう想いがない訳ではない。
だったら、彼も一緒にパーティーを抜けてサヤと一緒にやっていけばいいのだろうが、これもまたいかんせん。「烈火の勇者の戦士」としてマグナスは有名になり過ぎた。その有名人が抜けたら騒ぎになるのは必至。責任感の強い彼はそこもあってパーティーを抜ける事が出来ないでいた。
「大丈夫です。先生……これだけいただければ十分です。今まで大変お世話になりました」
サヤはそう言ってマグナスにペコリと頭を下げて再び歩き出した。
マグナスは再び呼び止めようとするその手をすぐに下げた。パーティーから抜けられない自分が今更彼女を呼び止めたところで無駄に終わるだけなのだから……
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