34.3つのスタンピード
オーク・リザードマン・ミノタウルスの3つのスタンピードが「テリュカ」に向けて進行中という報を受け、冒険者や騎士団達が集結して一気に慌ただしくなった。
一応、「テリュカ」は常に結界は張っており、被害を受ける心配はないのだが、「テリュカ」という国は、他所の国に比べるとスタンピードが進行してきた例が極めて少ない上に、今回は3つのスタンピードである。超自然災害級とされるスタンピードなので、備えておかない訳にはいかない。
「おい、ミノさん。ミノタウルスの方はミノさんが説得してどうにかなんないか?」
「こんな時に冗談を言ってる場合か?」
「こんな時だからこそ冗談でも言ってないとやってらんないぜ……」
ダンクとダンクパーティーでベテランの男性冒険者がそんな会話をする。長い付き合いだからこそ出来る会話だった。
「あの……こっちも大変ですが、サヤさんの方は大丈夫なんでしょうか……?」
「あぁ、多分あの人なら大丈夫ですし、娘2人も無事でしょうから。むしろ、2人に手を出したアホの方が心配ですね」
「えっ?今なんて……」
「なんでもないですよ。コタロー君は今はサヤさんの事より、目の前の状況に集中してくださいね」
「はぁ……」
コタローとコロナはそんな会話をしていた。本来、コロナは非戦闘員だが、冒険者ギルドの連絡要員も兼ねて現場に来ていた。
「B班は住民の避難を優先せよ!!王城なら鉄壁の守りじゃからスタンピードがいくら来ても多少は防げるはずじゃ!!A班は冒険者達と連携して防備を固めよ!!残った班は両班の補助に回れ!!よいな!!」
エイーダが指示を出し、その指示に従って騎士団は動いていく。
「陛下」
先程エイーダに危機を知らせに来た竜人のクリステア・シェイカスがエイーダに声をかける。彼女は、エイーダの右腕とも呼ばれ、文武両道の才女である。
「クリステア。いざとなったらワシは本気を出す。その場合、国の事は頼んだぞ」
「陛下!?それは!!?」
「分かっておる。あくまでも最終手段じゃ。それに、せっかく娘達の養育費を大量に稼げるチャンスであやつが来ない訳ないしな」
エイーダは楽しそうに笑いながらそう言ったが、すぐに真剣な表情になり
「しかし……あの娘達が離れてからこの国にスタンピードが3つも迫るか……やはり彼女達は……」
「陛下……」
「分かっておる。今は目の前の状況に集中する」
エイーダはそう言って、冒険者や騎士団達に指示を送る為高台に上がる。
「騎士団諸君!並びに!冒険者諸君!「テリュカ」の危機の為、皆がここに集まったのを余は誇りに思う!今こそ!我が国の危機を救う為!全員!と……!」
「それは困るわね。せっかく娘の養育費が大量にやって来たのだから」
エイーダが全員に突撃指示を出そうとした瞬間、上空から、双子のエルフの子供と手を繋いで舞い降りてきた女性、サヤ・フィーリガルがラナとシアを伴って到着した。
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