7.「歌手」アロマ

数日後……コタローの提案通りにサヤは言い訳をし、ラナとシアには別の指導者をあてがった。その指導者とは……


「それじゃあ、ラナちゃんとシアちゃんがどれぐらいの実力なのか聴きたいから聴かせてくれるかしら?」


『は〜い!!』


ラナとシアの指導者に選ばれた人物。それはアロマだった。というのも……


「まさか……アロマさんの職業が「歌手」だったなんて……」


「歌手」とは、文字通り歌い手である。これも立派な冒険者適正職業で、歌う事でパーティー内の身体能力を上昇させたり、敵の能力を下げたりする。まさに歌って戦う職業なのだ。


「割と冒険者の間ではアロマの事は有名だぞ?知らなかったのか?」


隣でサヤと同じようにラナとシアの歌指導を見学しているディアスがそう言った。


「冒険者適正職業に選ばれ、勇者パーティーに入ってからは戦闘訓練と雑用でいっぱいいっぱいで、冒険者としての知識をあまり深めてこなかったので……ラナとシアと一緒の時は2人でいっぱいいっぱいでしたし……」


サヤが軽く溜息をついてそう答えた。勇者パーティーに所属していた時は、マグナスの剣の稽古内容を覚えるのと、パーティー内の雑用をするのでいっぱいで、そういった噂話を耳にする余裕がサヤにはなかった。ラナとシアに出会ってからは、ラナとシアに夢中で他の事はあまり気にならなくなっていた。


「すまんな。嫌な事を思い出させてしまったな」


「いえ。別に気にしてませんから」


実際に全く気にしていないサヤはそう答えた。しかし、これはいい機会だと思い、サヤはアロマの冒険者時代の話を聞いてみる事にした。


「アロマさんは冒険者時代はどういう方だったんですか?」


「そうだな。前にドライアドの長様が言っていたように活発な娘だったよ。「魔物滅唱」なんて二つ名で呼ばれていたな」


今のアロマからは想像もつかない二つ名にサヤは驚いて目を見開いた。

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