3.「マリステル」王都会議3

ムスカの発言に周りの貴族達から動揺の声があがる。ユーリやローレン、自分に賛同してくれたクロードですら驚愕の表情を浮かべていた。そんな周りの様子を気にも留めず、ムスカは発言を続ける。


「まず、『神子』という存在が噂通りだとしたら、その2人は神に愛された子という事になる。故に、2人を戦争を起こして無理矢理連れて行くようなマネをしたら、どんな神罰がくだるか分からないとも言える」


「そ……それは……!?実際に神に愛されてるかどうかなんて……!!?」


「実際に『神子』が存在していて、その力も存在するなら、そういうものがあってもおかしい話ではありません」


「ぐっ……!?」


ムスカの言葉にローレンは押し黙る。ムスカの意見は仮定の話ではあるが、『神子』がそういう存在である以上、ないとは言えない。


「だとするなら、ユーリ王子のお金で誘える方法はありかもしれないが……」


「そうだろう!そうだろう!やはり私こそが……」


「ですが、そのお金はどこから出せるのですか?」


「そ……!?それは……!!?」


今度はムスカの言葉にユーリが押し黙る。ユーリはこんな発言をしているが、この国が金策で困っている事は十分に理解していた。


「ユーリ王子の案が1番妥当ではありますが、それをするにはまずこの国の国庫を潤す為の施策が必要かと……例えば、もう少し冒険者への優遇制度を抑えたり、簡易結界を貴族街以外にも張ったりするなど……ね」


ムスカの言葉に今度はそれぞれの派閥の貴族達が押し黙った。

魔物を寄せつけない簡易結界は、「マリステル」は有力貴族の領地や王城にしか設置しておらず、平民街区や、下位の貴族の領地などには設置されていないので、そこに魔物被害が多発している。

しかし、田畑を耕し、食料やら何やらに至るまで作っているのは暮らす人々だ。その人々が魔物被害にあっていなくなれば、作物などは育つはずがない。更に、冒険者を優遇しすぎるこの国の制度が、それにより拍車をかけていっている。

だが、有力貴族達はそれでも簡易結界を自分達だけで買い占め、冒険者達を優遇するのをやめないだろう。そうしなければ、自分達の領地や命を守る事が出来ないから……


そして……結局この日も王都会議は何の結論も出せないまま終わった……

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