第3話
この街で過ごす最後の夜。
空っぽの自分の部屋。
からからとベランダの戸を開け、外に出てみる。
風が春の寒さを運び、すぐに体を包み込んだ。
月の無い夜空を眺めながら、慣れた手付きで煙草に火をつける。
大きく煙を吸い込み、ゆっくり吐き出す。
薄黒い空が、少しだけ灰色に見えた。
これからの生活に、不安が無いと言えば嘘になる。
上手くやっていけるだろうか。
が、始まってもいない事を考えても何も始まらないと、すぐに頭を振った。
煙草の火を消し、部屋に戻る。
枕と毛布だけの簡単な寝床に体を潜らせ、冷えた体を温める。
真っ暗な天井を見つめ、これまでの2年を振り返れば、案外儚くて脆いようにも思えた。
思い出は静かに、胸の奥へ奥へしまっておこう。
目蓋を閉じて眠りの世界へ。
甘い睡魔に身を任せ、眠りへと落ちていく。
―新しい生活が始まる―
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