第76話

真夏の陽射しに顔をしかめながら、学校までの道をありさと歩く。

じりじりと肌を焼く暑さに、蝉のうだるような声のハーモニー。

とどめの太陽に、思わず唾を吐きたくなる。


「暑い~、暑い~」


自分の横では、団扇で扇ぎながらも、何度も暑さを訴えてくるありさ。


「暑いのはみんな一緒だろ」


額の汗をタオルで拭きながら言う美咲。


「プールに飛び込みたい…。

 あ、そだ。

 プールといえば、昨日は買い物に行かなかったんだって?」


「ああ、そうなんよ。

 あれ、話したっけ?」


「いや、昨日の夜に澪に電話したら、行かなかったって聞いたからさ」


「そっか。

 なんか急にバイト入っちゃったから、今日は行けないってメッセが入ってた。

 で、何度か電話したりメールしたんだけど、結局返信も電話も無かったんだ」


暑い外から校舎に入り、教室を目指して歩く。

教室のドアを開けると、クーラーの涼しい風が体を優しく撫でる。


「うおおおっ、クーラー様ぁあっ!」


「あ、おい、まだ話の途中…もう」


呆れながら自分の席に座り、鞄から取り出した荷物をロッカーにしまい、自分の席に戻った。

そういえば、澪はまだ来ていないのか?

そろそろ来るはず…。


そう思ってドアの方に目をやると、タイミングよろしく澪が入ってきた。

目が合ったが、ふっとそらされた。

はて、今確かに目が合ったような…。


「おはよ」


美咲から声を掛けてみる。


「おはよ。

 昨日は…その、ごめんね」


少しだけ目を合わすと、またすぐに目をそらされてしまった。

なんだ、どうしたんだ?


「水着、いつ買いに行こうか」


「あ、その、ほら、一緒に買いに行ったら、お互いの水着が先に解ってつまらないじゃない?

 だから、別々に買いに行かない?

 その方が、当日も楽しいんじゃないかな」


少し俯きながら話す澪に対し、何かを言いたい美咲だが、上手い言葉が見当たらない。


「…そっか。

 それならそれでいいよ」


これ以上の会話は、なんとなく辛い。

会話を早々と終わらせ、澪の方に向けた体を前に戻した。

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