第77話

「みさきち~、水着まだなんでしょ?

 あたし今日は手伝いないから、一緒に買いに行こうよ」


帰りのHRが終わると、ありさが声を掛けてきた。


「ああ、いいよ」


「澪も一緒に行く?」


「あ、あたしはいいや。

 じゃあ、先に帰るね」


足早に教室を後にした澪を見送った2人。


「なんかあった?」


「それは私が聞きたいよ」


溜息混じりに美咲が答える。


水着を見に、大型ショッピングモールに出向いた。

いろんな種類の水着があるが、自分に合う水着が見つからない。

水着を探しつつも、ありさと先程の会話の続きをした。


「澪に適当な所で待ってもらって、終わったら連絡するって言って待っててもらったんだよ」


「で、告白を断った、と」


「うん。

 終わってから連絡入れたんだけど…って感じ」


買い物を終えるとファーストフード店に入り、遅い昼食をとった。


「なんだかなあ。

 よく解らん」


大きな口を開けながら、ハンバーガーを頬張るありさ。

口の回りはソースだらけだったが、敢えて美咲は突っ込まなかった。


「憶測だけど、案外その告白を澪に見られてたりして」


「あの時、廊下に人気は無かったと思うけど」


「自分では気付いてなかっただけかもよ?」


「ん~…。

 でも、それを見たからって澪が気まずく思う事はなくないか?」


「人様のそういうのを見掛けたら、気まずく思うだろ。

 あたしが告白されてるところに出くわしたらどうする?」


「指さして爆笑する」


「こんにゃろうっ」


食事を済ませると、特に寄る所もないので帰路を辿った。

別れ際、ありさが言う。


「まあ、あんまり気になさんな。

 明日は普通かもしれないし。

 あ、プールに行く日を決めなきゃだね。

 明日学校で話そう」


「解った。

 ありがとな。

 じゃあ、また明日」


バイクを走らせ、家を目指す。

澪の家に行こうかと思ったが、またあんな雰囲気になるの嫌だったからやめた。


気にするなと言われても、気になってしまうものである。

考えないようにしても、考えてしまう。

いつも明るい笑顔で接してくれるのが嬉しくて。

この前の看病しにきてくれた事だって凄く嬉しかった。


距離が縮まったような気がしていた。

自分の傍で笑ってくれてるが、本当に嬉しくて。

大切に思う自分がいた。


心のもやを振り払うべく、なるべく考えないように心がけ、明日に望みを託す事にした。

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