第78話

次の日も澪の態度は昨日と同じだった。

距離を取られているような、離れているような。

ありさ達とは普通に話すのに。


放課後に、4人でいつプールに行くかを話し合った。


「んと、みんなの都合のいい日とかある?

 あたしは予め日にちが解れば、いつでも空けられるよ」


「私はいつでも大丈夫」


「僕もいつでも大丈夫だよ」


「あたしも予め日にちが解れば大丈夫かな」


「じゃあ、7月30日は?」


「いいんじゃない?」


「バイト休み入れておくね」


「僕も大丈夫」


「ほんじゃ、この日に決まり。

 時間は11時に、待ち合わせ場所は駅にしようか」


話もまとまり、あとは当日を待つだけだ。

ありさは梓と帰るといい、先に帰ってしまった。

気まずい2人だけが、教室でどうしたものかと黙っている。


プールの話をしている時も、やっぱり目をそらされた。

何度も合っていたのに。

いい加減、美咲も面白くはない。


「澪」


名前を呼ばれ、体がぴくっと反応する。


「何…?」


「何で喋ってくれないの?

 目もそらしてばかりだし。

 私、澪に何かした?

 もししたのであれば、ちゃんと謝るから」


誰もいなくなった教室に、美咲の低い声が響く。


俯いて前髪で隠れた顔。

澪の表情を読み取る事が出来ない。


「な…んでもないの」


少し震えた声で答える澪。


「ごめんね、嫌な思いをさせてるのは解ってる。

 でも、どう接していいのか解らなくて」


「いつも通り接してほしいんだけど…。

 私の事、嫌いになった?」


「そんな事ないっ!」


急に大きな声を出した澪に、少し驚きの色を見せる美咲。


「そんな事…ある訳ないじゃない…」


右手で顔を覆いながら、次の言葉を探している。

小さく嗚咽を漏らしている事に気付き、益々どうしていいのか解らない。


何故泣いているのか。

何故私を拒むのか。

何故が付き纏う。


「ごめ、ん。

 帰るね…」


鞄を持ち、歩き出そうとした澪の手を素早く掴む。

澪の手は震えていた。

歩き出すのを止められた澪は、その場に立ち尽くす。

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