第80話

終業式。

行こうか、行かないか、正直悩んだ。

澪の顔を見るのが辛かったから。

しかし、今日で学校も終わりだからと、渋々行く事にした。


ありさ宅に着くと、誰かが外で待っていた。

あれは…松本さん?


バイクを停めてから、急いで彼女の元へ向かう。


「おはよ。

 なんでここに?」


「おはよです。

 田山さん、バイク乗ってるんだね」


「あ、それ内緒ね。

 バレると色々厄介だから」


「解った」


「いや、じゃなくて、ありさの家の前で何してんの?」


「昨日、一緒に帰った時に、学校一緒に行こうと言われたもんで」


「あ、そうなんだ?

 じゃあ、邪魔しちゃ悪いから、私は先に行くわ」


「いやいや、田山さんも一緒に行こうよ。

 僕はありさがいればいいから」


さらりと本心を吐露する梓。

ある意味強者だなと思った。


「松本さんってありさの事、好きなの?」


「え、ああ…、そうだね、好きかな」


「それはその…あ~、LOVEかLIKEで言うと?」


「無論、LOVEだよ」



やはりこいつは強者だと思う美咲。



「ありさには、自分の気持ち伝えたの?」


「いや、まだだけども。

 そうだな、今度のプールの時にでも伝えてみようかな」


「ありさの何処が好きなの?」


「優しいところとか、さり気なく気を遣ってくれるところとか。

 まあ、ベタだけど全部」


ガチャっとドアが開く音がすると、ありさが出てきた。


「おはよ、梓。

 迷わなかった?」


「うん、大丈夫だった」


「よっしゃ、行こうぜ~」


3人で並んで歩いていると、いつもよりも視線を感じる。

今の状態からすると、ありさは両手に花だった。

羨望の眼差しを受けるも、本人は至って気にしていない模様。


確かありさから、梓は後輩からよくモテると聞いた事がある。

同じ部活の後輩は勿論、時折先輩からも告白されると聞いた。


クールな雰囲気を持っているが、話すと面白い話をいつもしてくれる。

聞き上手でもあり、相談役に回る事も多いという。


それにしても、まさかあんなにどストレートにありさが好きだと言われるとは。

面食らったというか、なんというか。


でも、あんなにストレートに言えるのは羨ましくも思う。

自分はどうだろう。

隠してばかりで、何も出来てはいない気がする。

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