第25話

澪を支えながら体育館に戻ると、ちょうど試合が終わったところだった。

澪の代わりにありさが出場し、勝利を納めたようだ。


「おかえり~。

 澪、足は大丈夫?」


「うん、大丈夫。

 でも、試合には出れないから…」


「代わりに私が出ようかと」


少々驚いた表情でありさが言う。


「およよ、張り切ってるねえ、みさきち」


「ここまで勝ってんだもん。

 それに負けたくないじゃん」


「それもそうだわ」


久保に付き添われて、椅子に座った澪の周りに、クラスメートが集まる。

口々に言う言葉は。


「ねえねえっ、田山さんにお姫様抱っこされた感想は?」


「え、いや、脚が痛くてそれどころじゃなかった…かな…」


「勿体無い!」


「てか、2人とも凄い絵になってたよ」


「羨ましかったなあ。

 私も脚を捻ってみるかな」


「洒落にならんからやめてね」


近くで話を聞いていた玲が、すかさずツッコミを入れる。


どうやら、先程の美咲のお姫様抱っこの話で持ちきりのようだ。

あちらこちらから、同じような話が聞こえてくる。

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