第24話

「失礼します」


保健室のドアを開けたものの、室内に保健医はいなかった。

入れ違いだろうか。

とにかく、早く手当てをしないと。


澪を椅子に座らせると、美咲は棚から湿布と包帯を手にして澪の前に膝をついて屈んだ。


「佐山さん、ちょっと靴下脱いでくれる?」


真っ白な澪の脚が露になる。

ふと澪の顔を見上げてると、相変わらず痛みのせいで涙目のままの澪が自分を見ていた。

なんとなくドキッとしてしまった美咲だったが、その気持ちを振りほどく。


湿布のシートを剥がし、足首に湿布を貼ると、その上から包帯を巻いていく。


「…慣れてるね」


弱々しい声で呟く澪。


「中学の時にバスケ部だったから、こういうのよく先輩にやってたからさ」


視線を足首に移したまま喋る美咲。


「バスケ部だったんだ。

 だからあんなに上手かったんだね。

 凄く格好良かったなあ…」


不意に美咲の手が止まるも、何事もなかったかのように再び包帯を巻いていく。


「ありがと」


少し照れたような声で答えた美咲は、どんな顔をしていたんだろう。

俯いたままだった為、美咲の表情が解らなかった。


「立てそう?」


「ちょっと痛いけど大丈夫。

 でも、これじゃあ試合には出れないな」


「佐山さんの分まで、私が出るから大丈夫だよ」


「嬉しいけど、掛け持ちは大変じゃない?」


「大丈夫、体力には自信あるし。

 先生に頼んでみるよ」


「ありがとう。

 田山さんの姿、目に焼き付けておかなきゃ」


「恥ずかしいから見なくていいよ」


少し照れながら答え美咲に、悪戯な笑顔を向けながら言葉をかける。


「やだ、勿体無いもん」


そんな会話をしながら、2人は体育館に戻った。

他愛ない会話だったが、2人で話せた事が妙に嬉しかった。

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