真夏を駆け巡る向日葵

第71話

夏休みまであともう少し。

期末をなんとか乗り越え、無事に夏休みを迎えられる訳で。


「夏休みはどっか行かない?」


「あ、よければ私と一緒にお祭りに行かない?」


「ずるいっ!

 ねっ、あたしと一緒に行こうよっ!」


夏休みが近付くにつれて、声を掛けてくるクラスメートが増えてきた。

当たり障りなく交わしているものの、なかなかどうして、毎日引っ切り無しなのでそろそろ煩わしい。


「モテモテですわね、みさきち様」


ニヤニヤとした顔で言ってくるありさに、反論する気力も無い美咲。

ぐったりしていると、ありさはそのまま話を続ける。


「まだ呼び出されて、告られたりすんの?」


机に突っ伏していた美咲が、げんなりした顔でありさを見やる。


「今日の放課後にも1件……」


「律儀に応えなくてもいいと思うけどなあ」


「そうもいかんだろ。

 正直めんどいけど……」


「私には澪がいますって言っちゃいなよ」


「なっ、何言ってんだよっ!?」


「なんでそんなに焦ってんだよ」


つい反応してしまった。

看病してくれたあの日から、意識せずにはいられなくなっている。

けど、葛藤もある訳で。


「別に澪は友達だもん」


「じゃあ、澪に彼氏出来たらどうする?」


「……。」


「みさきちって、そんなに可愛かったかしら?

 なんで真に受けてんの?」


「だ~っ、だまらっしゃい!」


「おはよ~」


タイミングよろしく、澪が会話に参加してきた。


「おはよ。

 澪は夏休みはどうすんの?」


「ん~、多分バイトかな?

 まだ予定は決まってないよ」


「だってさ」


「なんで私に話振るんだよ」


「あ、そうだっ!」


自分の鞄を取ると、がさごそと何かを探し出した。


「昨日店長がこれくれたんだ~」


言いながら取り出したのは、プールの無料招待券だった。


「あ、ここ出来たばかりの所じゃん」


「これ1枚で4人まで行けるよ」


聞く耳を立てていたクラスメートが、瞬時に反応する。


「3人で行こうよ」


「水着着るの?」


「全裸でプール入る訳にはいかないだろ。

 みさきちは全裸で入るの?」


「アホか。

 水着無い」


「じゃあ、買いにいく?」


楽しく会話をしているところに、さり気なさを装って近付いてくるクラスメート達。


「あの、私も行きたいなあ」


「私も行きた~い」


「あたしも連れてって」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る